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小代焼 ふもと窯(熊本)の記事一覧

10月19日より『小代焼 三窯展』 ~ その③:ふもと窯 編

その②『瑞穂窯』編 から続きまして、最後は『ふもと窯』のご紹介。

小代焼の12の窯元の中でも歴史が古く、最大級の登り窯を持つ『ふもと窯』を興した井上泰秋氏は1941年熊本県玉名郡南関町生まれ。熊本県工業試験場修了後、京都の森野喜光氏に師事し、1965年に肥後焼窯元として独立を果たした3年後に現在の荒尾市府本へ移築し『小代焼 ふもと窯』と改名しました。50年以上にも及ぶキャリアの中で受賞歴も数多く、現在は熊本国際民藝館館長や熊本県民芸協会会長も務めています。

そして現在は、ふもと窯で作られるうつわのおよそ7割は息子の井上尚之さんが手掛けています。そのためここ最近は『ふもと窯』と言えば井上尚之さん。と認識されている方も多いようです。尚之さんは1975年熊本県荒尾市、現在のふもと窯に生まれ1996年に熊本デザイン専門学校卒業後、1996年より小石原焼の太田 哲三氏の元で修業し、2000年よりふもと窯に戻り、父である井上 泰秋氏に師事します。

泰秋氏は後進の育成にも積極的で、ふもと窯には常に2~3人ほどのお弟子さんがいらっしゃいました。ふもと窯で陶芸を学んだ後、地元で小代焼きの窯元として独立した方もいれば独自のうつわ作りを目指して熊本の地を離れた方もいらっしゃいます。MARKUSで長らくお世話になっている齊藤十郎さんもその一人で、今、お取り引きをお願いしている何人かの作り手の中にもふもと窯出身の方がいらっしゃいます。

今は後進の育成も尚之さんの手に委ねられ、今年の春に福岡県八女市で独立した作り手がいます。そして年に数回の窯焚きの際には近隣で独立した以前のお弟子さんたちが手伝いにやってくるそうです。1室におよそ1000点のうつわが収まり、それが連なり6室あるという巨大な登り窯を持つふもと窯ですから窯詰め~窯焚き~窯出しの作業は大仕事となります。そうして小代焼の伝統、ふもと窯の仕事は受け継がれてゆきます。

ふもと窯で作られるうつわは、地元の小岱山から掘り起こした土を干して水で漉したものを粘土にし、小代焼の最大の特徴である青白く発色する釉薬の元となる藁灰も、地元の農家から分けて頂いた藁を燃やして、それを裏山の沢の流れを利用した唐臼で細かくして使うなど全てが自家製で、その土地で採れるモノを江戸時代から変わらない技法を用いて原材料にしています。

最近は『ふもと窯 井上尚之』というとスリップウェアや象嵌などの技法によるうつわを思い浮かべる方も多いと思います。実際、尚之さんの個展などではスリップウェアが全体の品揃えの多くを占めて人気を博しています。ですが今回は『小代焼』の三窯による展示という事で、青白く深みのある発色が魅力の藁灰から作られた釉薬を施された伝統的な小代焼をメインにご用意いただきました。

古くからある伝統的な小代焼の代表的な技法に、柄杓に取った釉薬を器の表面に勢いよく振りかけ、その流れや滴りで文様を表現する“打ち掛け流し”がありますが、今回の展示ではそういった個性が強いモノは抑え目にして比較的シンプルで使いやすいモノが中心です。とは言えふもと窯が手掛ける小代焼が持つ、がっしりとしたフォルムやゴツゴツとした土の質感は存分に味わう事ができ、それでいて普段使いとしていつもの食卓に自然に馴染んでしまう使い勝手の良いうつわです。

今回の企画では『小代焼』をご紹介するというのが趣旨なので、12件ある窯元の中から個性が異なる3件を選びました。『ちひろ窯』さんは明るさと軽やかさがある現代的な小代焼。『瑞穂窯』さんは様々な深みのある青の色彩美としのぎの技法とうつわのフォルムによる造形美。『ふもと窯』さんはどっしりとした王道の伝統的な小代焼。ですがそのどれもが地元に根差し伝統を守り昔ながらの技法を用いながら各々の個性を発揮しています。是非とも店頭でお確かめください。

10月19日より『小代焼 三窯展』 ~ その②:瑞穂窯 編

 

その①『ちひろ窯・JTCW2018』編から続きまして、お次は『瑞穂窯』さんのご紹介。

瑞穂窯を興したのは、その①でご紹介した『ちひろ窯 前野智博』さんの師匠でもある初代当主の『福田 豊水』氏。そして現在、当主として『瑞穂窯』を継承しているのは豊水氏の息女である『福田 るい』さんです。伝統ある窯元を継承した当主としては珍しい女性の作り手です。ちなみにMARKUSもお世話になっている秋田の白岩焼和兵衛窯の渡邉 葵さんも女性の作り手で、再興されたおじいさまから数えて3代目です。

るいさんの祖父が古小代を集めていて、その影響を受け自身でも民藝店を営んでいた豊水氏が、古小代の微妙な青色を復元したいと、独学で窯を興したのが瑞穂窯の始まりだそうです。福田るいさんは1964年福岡県大牟田市生まれ。九州産業大学芸術学部で油絵を学んだ後『平面よりも立体的な造形物を』と、父、豊水氏の元で修業を始めます。その後、外の世界も見るべく益子の人間国宝『島岡 達三』氏の門を叩きます。

陶芸界隈とは意外なところで繋がっているもので、MARKUSでも長年お世話になっている益子の『岡田崇人』さんや松江の『袖師窯 尾野友彦』さんと同門という事になります。ちなみにお姉様は菓子研究家の『福田 里香』さん。コチラも意外な繋がりでした。島岡製陶所での修業を終え熊本に戻った後は再び瑞穂窯の父の元で作陶を始めて25年。お父様がお亡くなりなった後もしっかりと瑞穂窯を守り続けています。

12件ある小代焼の窯元の中から『瑞穂窯』さんに今回の企画をお願いしたかった理由は『色彩美と造形美』でした。『小代焼窯元 瑞穂窯 福田るい』の名前と作品は、もう何年も前から見知っており、普段から自宅でも何点かるいさんのうつわを使っているくらい、いつかMARKUSでお取り引きをお願いしたい作り手の一人でしたが、なかなか熊本まで出掛ける機会を作れないまま何年も経ってしまいました。

それだけに今回のお話はありがたく、喜んで取り組む事ができました。6月の熊本訪問がるいさんと初めてお話する機会となりましたが、初めましてで急なお願いをしているにもかかわらず頼もしく引き受けて下さいました。更にるいさんのサッパリとした面倒見の良さに甘えて、一緒に昼食を取った後に次の訪問先である『ふもと窯』までご案内いただき、2代目である井上尚之さんにも引き合わせて下さいました。

小代焼は鉄分の多い小岱粘土を使った素朴で力強い作風が特徴です。釉薬の調合や焼成温度の違いによって大まかに青、白、黄に分かれますが個体差が大きく独特の深みがあります。更にるいさんの場合、ワラ灰で生み出した独自の藍釉も大きな特徴で、従来の青小代は乳白色を帯びているのに対してるいさんが作り出す藍は他には無い更なる深みがあります。まさに親子2代で小代の青を追い求めた結果、独自の青に辿り着いた瑞穂窯の色彩美。という感じでしょうか。

もう一つ瑞穂窯の特徴と言えるのが “しのぎ”の技法。小代焼といえば“打ち掛け”のように釉薬のかかり方を生かした勢いのある技法が多いのですが、“しのぎ”の場合は掻き道具を使って器の表面を丹念に削り、削られた部分に溜まったり流れ落ちる釉薬の濃淡によって模様が浮び上がります。その模様の魅力を最大限に活かしているうつわの形状、独特なフォルムが秀逸で、表情豊かな色彩と“しのぎ”の模様にリズムが生まれ、和洋問わず食卓を彩ってくれる造形美となっております。

るいさんはチャリティーにも積極的に取り組んでおられ『クマモトのカケラ』というブローチやヘアゴムとマグネットからなるセットの販売を通して、日本各地の災害復興を支援しています。きっかけは2016年の熊本の震災で、まさに震災があったその時に窯焚きをされていたそうです。無残にも割れてしまったうつわのかけらをアクセサリなどの姿に変えて、収益の一部を被災地の復興支援に寄付する個人プロジェクトを行っています。

『伝統とは、灰を守ることではなく、熾(おき)を密かに保ち続けること。』つまり、窯の火を絶やさないと同時に情熱の炎も燃やし続けるという事。というお父様の教えを大切にし、しっかりと伝統的な日本の食事に合うような風格を持ったモノから、カジュアルなフレンチやイタリアンにも似合いそうなうつわが自然に混在する。そんな小代焼の伝統を踏襲しながらもフッと肩の力が抜けた『瑞穂窯 福田るい』さんのうつわにご期待下さい。

その③:ふもと窯 編に続きます。

10月19日より『小代焼 三窯展』 ~ その①:ちひろ窯・JTCW2018 編

会期の最初から最後まで殺人的な暑さにもかかわらず多くのお客様にお越し頂いた、7月の『齊藤十郎 陶展』以来のブログ更新です。スミマセン。しばらく夏の間は身も心もグッタリしておりました。猛暑と豪雨の記憶しかなかった今年の夏も、トドメの台風24号と共に去って行き(この投稿を書いている時点で25号接近とのニュースもありますが…)ようやく食欲の秋、うつわの秋がやってまいりました。

久し振りとなる今回のお知らせは『小代焼 三窯展』。小代焼とは熊本県北部を中心に現在12件の窯元によって作り出される江戸時代から続く焼き物で、今回はその12件の内の3件による合同展です。この企画の発端は経済産業省の支援を受けて設立された伝統的工芸品産業振興協会(以後、伝産協会)が毎年10月に開催している『JAPAN TRADITIONAL CRAFTS WEEK(以後、JTCW)』にお誘いいただいたのが始まりです。

今年で5回目となるJTCWですが、多くの方に工芸品をもっと身近に手に取って知っていただく為に、衣食住を扱うライフスタイルショップを通じて日本各地の伝統工芸品を紹介するイベントで、今年も10月19日(金)から31日(水)まで『JTCW 2018』として、東京都内の30のお店で日本各地の伝統工芸品の産地とコラボした展示販売が行われます。 ※ 詳しくは『JTCW2018』で検索してみて下さい。

このお話をいただいたのが5月の末頃で、参加の条件が『伝産協会に加盟している伝統工芸品の中から、今まで扱った事の無い産地とコラボする事』という事で、工芸品リストの中から、以前からお付き合いしたくて、でもなかなか産地に出向く事ができなかった熊本の『小代焼』を見つけて、大喜びで参加意思を表明し、6月には産地訪問として2016年の震災の爪痕が未だ残る熊本へ飛び立ちました。

小代焼は1632年肥後国に転封となった細川忠利が陶工たちを伴い小岱山麓に窯を開いて焼物を焼かせたのが始まりと言われ、現在も地元で採れる原料と伝統の技法を用いて素朴で力強い実用性の高い日用食器が生み出されています。今回の小代焼とのコラボを実現するにあたり思ったのが、『いただいたお話とはいえ、やるからには普段MARKUSで行っている展示会レベルの内容と物量で開催し、お忙しい中ご協力いただいた産地や期待してお越し下さったお客様に恥ずかしくない展示にする。』という事でした。

というのもMARKUSでは通常個展やイベント事は先ずはお付き合いの実績を積んでからお願いしており、作り手とのご相談も遅くとも1年以上前にはできているのですが、今回は準備に4ヶ月しかない上に初めてお取組みさせて頂く方々ばかりで、伝産協会からの話だから初めましてでもこちらのご相談に協力的に聞いて下さるかもしれないが物量の確保が困難だろう。というのが出発前からの課題でした。

できれば4~500点ほどは品物を集めたいと思うものの、小代焼窯元全12件にお声掛けするのも無理があり、1件だけでは到底及ばない。産地訪問の出張は2泊3日が限界で、窯元以外にもリサーチなどで回りたい所がいくつかある。(熊本ラーメンも食べたいし馬刺しも食べたいっ)という事で3~4件の窯元に絞って出発前にアポを取り、あとは当たって砕けるつもりで熊本に向かいました。そして晴れて『ふもと窯・瑞穂窯・ちひろ窯』の3件に今回の『小代焼 三窯展』にご協力頂ける事となりました。

それではまずは1件目、『小代本谷 ちひろ窯』さんのご紹介。ちひろ窯として作陶する前野智博さんはサラリーマン時代を経て28歳で陶芸の道へ入ります。次回のブログでご紹介する、今回の『小代焼 三窯展』にもご参加いただいている『瑞穂窯』の初代、福田豊水氏に師事し陶芸の基礎から学び、その後更なる修行を求めて沖縄へ渡り、読谷村の玉元輝政氏に師事し様々な技法を習得します。

2年の沖縄での修業の後、熊本に戻り1998年に自らレンガを組み手作りで窯を築き『小代本谷 ちひろ窯』として独立を果たしました。ちなみに前野さんの奥様は玉元氏の工房とも目と鼻の先にある読谷村の共同売店で働いていた頃に、沖縄で修業中の前野さんと知り合ってご結婚されたそうで、同時期に近所の大嶺實清氏の元で修業されていたMARKUSでもお馴染みの壹岐 幸二さんや真喜屋 修さんとも旧知の仲だそうです。

2003年に現在の場所に窯を移し小代焼窯元の会にも登録し、2006年には経済産業大臣指定伝統工芸士の認定も受けられました。そんな前野さんの作風は、他の『ふもと窯』『瑞穂窯』の二つが豪快で重厚感があり力強い印象が濃いのに対して、同じ小代焼きでも丁寧で軽やか・繊細。という印象があり、特に昔ながらの唐草を作る玉元氏の元で修業した名残も一部の作品に垣間見る事ができます。

土は窯の近くを掘れば出てくるという恵まれた環境。釉薬は近所の農家から分けてもらったワラを焼いた灰を使い、窯の薪も同様で地元の身近にある原材料によって自給自足に近い昔ながらの手法でうつわ作りに勤しみ『従来の小代焼というと重厚な印象で気軽に手が出にくいモノが多かった。だからなるべく現代の暮らしに合うものを心掛けています。日々の食卓で料理を盛った時に映えるという事を考えて』と語る前野さん。

その言葉どおり、小代焼の持つ伝統を残しつつも前野さん独自の感性と経験から生み出される『ちひろ窯』のうつわは、明るく軽やかで様々な食卓のシーンに溶け込み、料理との相性もイメージしやすい使い勝手の良いうつわです。東京でちひろ窯さんのうつわをまとまった数でご覧いただける機会もなかなかございません。ご期待下さい。

その②:瑞穂窯 編に続きます。

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