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11月23日(金・祝)より『白岩焼和兵衛窯 渡邊 葵 展』開催いたします。

日中の気温も随分下がり、陽が出ていても上着なしでは肌寒い季節になってまいりました。10月の後半から11月の初旬まで開催していた『小代焼の三窯展』もおかげ様で盛況の内に会期を終え、しばらくのんびりと通常モードで。と思っていたら今度は11月23日(金・祝)勤労感謝の日から、2018年最後のイベントとなる展示『白岩焼和兵衛窯 渡邊 葵 展』11月23日~12月2日の会期で始まります。
● 作家在店日:11月23日(金・祝)・24日(土) ● 会期中は休まず営業します。

【個展初日の前日、11月22日は売り場準備の為お休みとさせていただきます】

MARKUS開業から5周年となる2018年は『積極的にイベントを打っていこう』と思い立って動き始めたのは昨年の夏頃。2月に『安土草多の灯り』。ゴールデンウイークに『をのぜの人』。7月に『齊藤十郎 陶展』が決まり、12月に入って「お付き合いも3年だし、そろそろ白岩焼の渡邉さんにお願いしても」と思い、ご連絡をしたところ「私も同じことを考えてました」と、嬉しいお返事が返ってきました。

渡邊さん=白岩焼との出会いは2015年の5月でした。都内のお店にご自身の作品の売り込みをしようと秋田から上京されていて、何件かのショップを回った中でMARKUSにも立ち寄って下さいました。『秋田の角館という所で白岩焼という焼き物をやっています。よかったら作品を見て下さい』と、丁寧で静かな口調ながらも必死さが伝わってきたのを覚えています。

ちょうどお客様も途切れた頃合いだったので、その時渡邊さんが持参した作品を見せていただきました。都内で手仕事の品物を扱うお店をやっていると、年に何回か作品を持ち込んで売り込みに来られる方がいます。そこそこキャリアのある方や始めて間もない方。作品もご本人の考え方も趣味の域から脱していない方。社会に出た事も無く自力で生活もしていない、口のきき方も知らない学生みたいな方。実に様々です。


※上の画像は過去に取扱商品をご紹介した際のモノです。

私もお店を始めてまだ年月も浅く諸先輩方と比べると知識も目利きもまだまだですが、そんなMARKUSを選んでわざわざ来てくれている事を有り難いと思っているので、基本的に門前払いをするような事はありませんが、売り込みに来られる方々と接している内に『少なくともモノ作りで生計を立てて、実店舗で勝負しているプロの作り手と仕事がしたい』という思いが固まっていました。


※上の画像は過去に取扱商品をご紹介した際のモノです。

そしてそこに現れた渡邊さんご自身も渡邊さんが持ってこられた作品もまぎれもなくプロのものでした。ですが、その時に見せていただいた作品はMARKUSの雰囲気や私の好みに合うモノではなく、かなり女性的で繊細で華やかな作風のモノで、到底そのままお店に並べられるものではありませんでした。ですが質感やカタチ、釉薬の感じは悪くなく、もっと他にも作品を見てみたいと思い『コレはコレではイイとして、他にこんなのはやらないの?』などと、こちらが欲しいと思う要望を出してみました。今思えば上から目線で失礼な話です。


※上の画像は過去に取扱商品をご紹介した際のモノです。

まだお付き合いもしていない作家さんにこういう事を言うと嫌がる方も多いのですが、渡邊さんは『出来ます。やってみます。また見て下さいますか?』と、私なんかが言う事にもとても素直で前向きで『出来上がったらまたご連絡します。』と言い残して帰って行かれました。その数か月後には約束通りリクエストの作品が届き、また次のリクエストを出して。というやり取りが何度かあり、最初の注文に漕ぎつけるまで1年近くかかりました。


※上の画像は過去に取扱商品をご紹介した際のモノです。

正式に注文をお願いする際は渡邊さんも上京されていて、感極まって涙を流されていました。驚いてお話を聞いてみると最初にMARKUSに来る前は、作品を見てもらってもほとんど相手にされなくて、ちゃんと話を聞いてくれたのがMARKUSだけだったそうです。確かに最初に持ってきた作品は実際よくできたモノでしたが売り込み先との相性が悪く、いわゆる器ギャラリーのような『THE 作家物』を扱うようなお店だったら状況は違っていて、あのままでは東京の、それも民藝寄りのお店ではあまり好まれないだろうな。と思わせる作品でした。


※上の画像は過去に取扱商品をご紹介した際のモノです。

私がした事は白岩焼和兵衛窯だからこそ出来得る自分の好きなモノ・MARKUSに置きたいモノを好き勝手にリクエストしただけで、それに嫌な顔をせず真摯に付き合ってくれた渡邊さんには心から感謝しています。ではなぜ私が最初は好みじゃなかった渡邊さんの作る白岩焼に食い下がってアレコレとお願いし続けたのか。それは初めて白岩焼の海鼠釉の濃厚な青白さを見た時に、既にハマってしまっていたのだと思います。

『白岩焼の特徴である海鼠釉は、日本各地で似たようなモノが使われているが 白岩焼がいちばん良い。』と、濱田庄司に言わしめたその青白い美しさと濃厚な質感が、白岩焼和兵衛窯の最大の魅力です。海鼠釉のうつわ自体は私も手にした事はありますが、実はあまり好きではありませんでした。しかし渡邊さんから見せていただいた海鼠釉はそれまでの私の印象を一発でひっくり返すほどのインパクトがある出会いでした。

白岩焼の歴史は古く1771年に始まります。11代にわたり秋田藩を治めた佐竹家の庇護により栄えましたが、江戸末期から明治にかけての動乱の中、1901年に白岩焼 の歴史は途絶えます。その70年後、白岩焼の復興を目指した渡邊家は、折しも民藝運動によって来訪していた『濱田 庄司』の助力もあり1974年に再興を果たしました。地元の原料にこだわり、登り窯と灯油窯を使い、現代の美意識に合うモノづくりを続けています。

渡邊葵さんは1980年生まれ。2005年に岩手大学大学院教育学研究科(美術工芸)を修了後に父である渡邊敏明氏に師事し、2009年に京都府立陶工高等技術専門校研究科を修了後そのまま同校の講師となられます。2011年に秋田に戻り和兵衛窯にて制作活動を再開している現在は、白岩焼和兵衛窯をご家族で守りながらご自身の白岩焼を制作し、伝統を守りつつご自身の感性を軽やかに作品に投影しています。

なんだか『MARKUSと渡邊葵の物語』みたいな感じになってしまいましたが、MARKUSと渡邊さんの間にはそんな歴史があり、お互いに今回の個展には特別な思い入れがあります。渡邊さんの人柄がよく表れた、丁寧で誠実な仕事から生み出されるしなやかな造形や深みのある色合いにも磨きがかかり、これまでにMARKUS でも披露した事のない新しい世界が広がります。皆さまのご来店を心よりお待ちしております。

『齊藤十郎 陶展~JURO POTTERY EXHIBITION』会期延長のお知らせ

猛暑の中始まった【齊藤十郎 陶展】。たくさんのお客様にお越しいただきまして誠にありがとうございます。初日と二日目の十郎さんの在店中も遠方からお越しの方、懐かしい方、たくさんのお客様にお越し頂き賑やかなスタートとなりましたが、記録的な連日の猛暑でお出掛けを躊躇っている方もいらっしゃると思い、十郎さんとも相談して【会期を7月いっぱいまで延長】する事に致しました。

しばらくこのまま猛暑が続くかもしれませんが、もう少し会期が長ければタイミングを見計らってご来店いただけるゆとりも生まれるのでは。と思い、このようにさせていただきました。600点の大ボリュームで始まった今回の【齊藤十郎 陶展】。人気のスリップも新作の点打ちもまだまだ見応え充分の品揃えで、出来るだけ多くのお客様にご覧頂きたいと思っております。

実に幅広い品揃えで取り組んでいただいた今回の個展ですが、やはり多くのお客様の注目の的はスリップウェアでした。スリップだけでも300点ほどご用意いただいた今回の品揃えは、常設の時と比べても断然幅広く、普段はだいたい6寸以上の大きさのスリップしか取り扱わない、いつものMARKUSをご存知のお客様も目を輝かせて興奮気味のご様子でした。

定番のモノに加えて、楕円のうつわでも、いつものカレー皿に少し小さいサイズ、楕円の平皿でも少し小さいサイズを追加した4パターン。角のうつわもいつも角のカレー皿と平たい角皿。そして正方形の鉢。8寸のカレー皿に深い8寸皿と9寸皿を加えたりとバリエーションが多彩に広がっております。

小さいモノでは定番の7寸平皿や6寸皿に加えて4寸・5寸皿と丸・角・楕円の小鉢、丸・角・楕円の豆皿。といった感じでかなりの充実具合です。それとは対照的に大迫力の尺4寸の大皿と尺5寸の大鉢も今回の為に焼いていただきましたので、この機会に是非ご覧になっていって下さい。

スリップとは対照的にシンプルで素朴な土の質感を楽しめる焼き締めのシリーズもたくさんご用意いただきました。以前に6寸と7寸の鉢のみ入荷した事がありましたが今回は8寸と9寸の深鉢。4寸と5寸の小鉢など幅広いサイズ展開です。スリップと同じ作り手によるモノとは思えないほどのシャープな線でザラリとした質感が楽しめるうつわです。

冬場に人気だった楕円の耐熱鉢やバーナードリーチや出西窯を思わせる平皿も飴釉に指描きを施した装飾で人気を集めています。ピッチャーやポット、マグカップから湯吞み・タンブラーなど様々なアイテムが揃っており、スリップの次いで品揃えがが充実しているシリーズです。

小物もたっぷり届いておりまして、マグカップ・湯呑・飯碗・醤油差しなども合わせると100点を大きく上回ります。カタチや柄、釉薬の種類も様々でなかなか絞り切れないため皆様苦労して選ばれています。個展の会期中にもギフトのご依頼を何度かいただいておりますが、店内の込み具合によっては少々お時間をいただく事もございますので予めご了承下さい。

以前にもお話した事がありますが、十郎さんはポットやピッチャーなどパーツを組み上げて作っていくのが好きな方です。スリップウェアのような豪快な作業をしていたかと思うとポットのような細かい作業も大好きだそうで、その最たるモノが【切り子】のシリーズです。上の画像の左下のモノですがとにかく作業が細かい。『そこまでやるのか』というほど気を抜く事無く細部までこだわりが行き届いております。

そして今回、秘かに注目されているのが、十郎さんも『何年ぶりかわからない。』とおっしゃるほど久し振りに作っていただいた土瓶です。以前から良い弦があれば作りたいとおっしゃっていたので、5月の三人展で山野孝弘さんから譲っていただいた弦を十郎さんにお渡ししてこのたび実現しました。十郎さんらしいどっしりとした佇まいで、田舎の縁側で家族みんなで回し注ぎできるたっぷりとした容量。というイメージです。

イッチン・点打ち・指描きなど、様々な技法で、これまた様々な大きさのどんぶりや鉢も作っていただきました。とかく大きなうつわが好きな私としてはワクワクします。選んでいるお客様も何を盛り付けようか妄想を膨らませながら楽しそうに悩んでいて、この個展をやってよかったなぁ。と思える瞬間のひとつです。

猛暑もまだまだ続きそうですが、【齊藤十郎 陶展】も会期を延長してまだまだ続きます。夕方になると日差しも和らぎ、いくぶん涼しくなってくるので、その頃合いを狙ってのんびりご来店されてじっくりお選びになるお客様が多いです。まだまだ見どころたっぷりですので、店内を涼しくして皆様のご来店をお待ちしております。

 

 

『齊藤 十郎 陶展』開催のお知らせ

今年は例年より早く梅雨が明け、2019年も後半戦に突入しました。今年は積極的にイベントを打っていこう。というチャレンジの年で、2月には吹きガラスの安土 草多さんによるの照明の個展。ゴールデンウイークには島根県松江市の北岸にある小さな港町、魚瀬にゆかりのある袖師窯 尾野友彦さん・カンナカガラス工房 村松 学さん・出雲民藝紙 山野 孝弘さんによる3人展。『をのぜの人~ガラスと陶器と和紙の人』を開催しました。

そして第3弾となる今回は …
【 齊藤 十郎 陶展 ~ JURO POTTERY EXHIBITION 】 2018年 7月14日(土)~ 22日(日)の会期で開催致します。 ※  作家在店日:7月14日(土)・15日(日)・ 会期中は休まず営業します。
これから夏本番。というこの時期に暑苦しいまでのボリュームと品揃えでお届けいたします。ご期待下さい。

さかのぼって調べてみると十郎さんとは2014年の秋からのお付き合いで、最初の納品は2015年の年明けでした。もっと早くからお付き合いがあったと思っていたので自分でも意外でした。今回の個展のお話がまとまったのも割と急な話で、昨年の秋に十郎さんの工房にお邪魔した時でした。普段から仲良くさせて頂いている中目黒のSMLさん絡みでの飲みの席でご一緒する事が多かったのですが、人気者の十郎さんの周りはいつも賑やかで、私はあまり積極的に声を掛けられずにいました。

十郎さんの工房にお邪魔した時もその話になって、十郎さんもMARKUSさんはマメに注文もあるし、よく顔も合わせるのにあまり絡んでこないなぁ。という印象だったそうです。そこで、いざ工房で初めて二人っきりでお話してみると急にそれまでの距離を縮めるように話が弾んで、MARKUSさんは個展とかあまりやらないの?という話題から 『いやいや、十郎さんでしたら是非とも。』という事で個展が決まりました。

十郎さんと言えば、豪快なスリップウェア。という印象をお持ちの方が多いと思います。もちろん私も十郎さんのスリップは大好物で、スリップの深みに引きずり込まれるきっかけとなった作り手の一人です。これまで何人ものスリップ作家の作品を見てきましたが十郎さんの作品は見てすぐわかります。ですが今回はスリップウェアだけでなく、十郎さんの持っている様々な顔を見ていただきたいと思っております。

十郎さんは1969年、神奈川県藤沢市の生まれ。数年の会社員生活の中で薪で焼成される器の美しさに魅了され、陶芸を志し1993年より熊本県の小代焼 ふもと窯の井上 泰秋氏の元で修業を始めます。その後1998年より鳥取県の岩井窯 山本 教行氏に師事し1999年に岐阜県の高山で独立を果たします。2004年には現在の工房がある静岡県伊東市に拠点を移し登り窯を築きます。2008年にイッテコイ窯に直すものの2015年には再び自らの手で4連の登り窯を築き現在に至ります。

小代焼 ふもと窯の井上泰秋氏のもとで薪窯での焼成と轆轤成型の基礎を学び、岩井窯 山本教行氏のもとで様々な装飾技法とカタチを学んだ十郎さんの作風は、しっかりとした基礎や技術に裏打ちされた上で多岐にわたっており、そして非常に奥が深いです。今回の展示ではスリップ以外にも灰釉や焼き締め、象嵌や切り子のような彫り物、古い沖縄に影響を受けたモノなど、様々な作風に取り組んでいただいております。

工房でお話した時も、『スリップのような型モノをしばらくやっていると、今度は無性にロクロを挽きたくなる。そしてロクロばかり挽いているとまた型物をやりたくなるんだよね。』なんて事をおっしゃっていました。そして『スリップやイッチンの様な感覚的な一瞬の勝負のよう装飾をやっていたかと思うと、緻密な作業もやってみたくなる。色々やるのが好きだから、それでバランスが取れてるんだろうね。』と楽しそうに語って下さいました。

実際十郎さんはポットや醤油差しなどを作るのがお好きで、『色んなパーツを組み立てて一つにしていくのが、プラモデルみたいで好きなんだよね。』と言っており、工房の片隅にある事務机の棚の上にはプラモデルの箱が山積みとなっていました。5月の企画展の際に籐細工の山野 孝弘さんに譲っていただいた土瓶の弦を『もし気に入って下さったらコレで土瓶をお願いします。』と十郎さんにお渡ししてありますので、もしかしたら今回の個展でカタチになってお披露目できるかもしれません。

何気なくMARKUSの事を気にかけて下さり、今回の個展を期にグッと距離を縮める事ができた十郎さんですが、そのお人柄から直接のお取引き以外にも最近になって思わぬ所で大変お世話になりました。6月の末頃に出張で熊本の小代焼の窯元を何件か訪問したのですが、是非ともこちらとお付き合いしたい。という思いが以前から強かった、小代焼 ふもと窯で修業された『まゆみ窯 眞弓 亮司』さんの工房にもお邪魔しました。

眞弓さんと十郎さんは兄弟弟子としてふもと窯での修業時代を過ごしており、今でも交流があるそうです。そして十郎さんがふもと窯を卒業した後に師事した岩井窯での兄弟弟子であり、MARKUSでもずっとお世話になっている鳥取の牧谷窯 杉本 義訓さんとも十郎さんを通じて長年の交流があります。お取り引きのお願いが眞弓さんの工房を訪れた真の目的ですが、まずは眞弓さんのうつわ作りの背景にある物語や思いを知りたかったのと私の考えや人柄を知ってもらうために、長い時間をかけてたくさんのお話をしました。

そこでのやり取りは割愛しますが、最終的にはお付き合いいただける事となりまして、決め手となったのが『十郎ちゃんや杉本君とちゃんとお付き合いされているMARKUSさんだったら大丈夫 』との事でした。十郎さんや杉本さんに絶大な信頼を寄せ、その二人が信用しているんだったら安心して付き合える。という本当にありがたいお言葉をいただきました。まさに十郎さんのお人柄がなせる業で、遠く熊本から十郎さんに心から感謝したエピソードです。

引き寄せられるように導かれて決まった今回の齊藤十郎 陶展。様々な縁に感謝しつつ皆様のご来店をお待ちしております。スリップウェアのファンの方もこれから十郎さんの仕事の幅広さを知ってみたい方も、きっとご満足いただける内容になるかと思います。是非ともご期待下さい。

 

『をのぜの人~ガラスと陶器と和紙の人』5月13日まで。

4月28日(土)から開催しております『をのぜの人~ガラスと陶器と和紙の人』もゴールデンウイークも終わり、後半戦に入りました。連休中はたくさんのお客様にお越し頂きまして誠にありがとうございます。展示総数1350点と、過去最大の物量を投入した今回の企画展も残すところあと数日となりました。

● 5月20日(日)はお休みをいただきます。

会期前日の27日は徹夜作業での売り場準備となり、明け方にいったん自宅に帰ってシャワーを浴びて着替えて店へとんぼ返りという、久し振りの重労働と寝不足で妙なテンションのまま初日を迎えましたが、おかげ様で満足いく売場も完成し、無事に開店からたくさんのお客様をお迎えする事ができました。

初日の28日はカンナカガラス工房の村松学さんと袖師窯の尾野友彦さん。29日にも尾野さんに在廊していただき、お二人に会いに関東近郊だけでなく遠方からもたくさんの方にご来店いただきました。以前に村松さんの個展で作品をご購入された方や、袖師窯さんにお邪魔した事のある方、関東にお住まいの尾野さんのご親戚の方など、両日とも和やかな空気ながらも終日賑わっており、気持ちのいいスタートとなりました。

とにかく今回は1350点という大ボリュームを、どうやって余すところなく全てお見せするか。というのが売り場づくりの課題となったのですが、どうにか全商品を出し切りました。ストックしようにも売場から下げている常設商品があったため、とにかく出し切るしかなかったというのが正直な所なのですが、満遍なく手に取っていただきやすい売り場になったようで、お客様からもご好評いただきホッとしました。

今回のカンナカガラス工房・村松 学さんの品揃えは、ワイングラスやタンブラーなどのグラス類とお皿や鉢などのうつわ類がそれぞれ4割ずつ。ピッチャーやフタ物、花器や1点モノなどで2割くらいといった幅広いラインナップでおよそ480点。グラス類でもクリアのモノから色ガラス、細い色ガラスを巻いたモノやグラヴィール彫刻という技法を施された手の込んだモノなど、これまで扱った事の無いタイプの作品もたくさん並びました。

今回の展示会が初めてのお付き合いとなった村松さんですが、前回のブログでご紹介したようなキャリアに裏付けられた確かな技術と幅広い作品群にただただ圧倒されるばかりでした。村松さんが在廊して下さった初日には、お客様に混じって『ココはどうやっているのか?この部分はどうなっているのか?』などと色々と質問を投げかけ、それに対しても丁寧にお答えいただき、こういった所でも村松さんの誠実な人柄が窺えました。

そして何より目を奪われたのが、花器やピッチャーなど1点モノなどに見られる緻密な細工と造形美、そして鮮やかな色彩です。まさに師匠である舩木先生ゆずり。という事でしょうか。大小さまざまな花器やフタ物、色鮮やかなうつわ類からグラス類までまだまだたくさんの作品がございますので、この機会をお見逃しなく。

袖師窯さんとはまだ2年ほどのお付き合いですが、今回は袖師窯130年の歴史や作品の奥行、懐の深さをまざまざと感じ、思い知る展示会となりました。まず今回袖師窯さんが今回の展示会の為にご用意下さったうつわはおよそ650点。これだけでも個展レベルの物量です。そしてその品揃えも新旧織り交ぜた非常に幅広いラインナップで、私自身も初めて目にする作品たちがたくさん並びました。

近年は二彩やスリップなどのパッと目を引く華やかなうつわが人気で今回もたくさん並びましたが、呉須や並釉、石見地方に古くから伝わる柿色の来待など、袖師窯の歴史を見るような昔から作られている作品も多数ご用意いただきました。ご来店いただいたお客様の中には古くからの袖師窯のファンの方もいらっしゃって、『コレは先々代のおじいさんの頃に作り始めた柄だね。』などと当時を懐かしむようにお話して下さいました。

『魚瀬=をのぜ』と袖師窯の関わりについてもとても興味深いモノでした。今回の『をのぜの人』は島根県松江市魚瀬町にルーツを持つ3人の作り手の合同展ですが、DMを見てお気付きの方もいらっしゃったかもしれませんが、袖師窯の尾野さんだけ松江市の市街地の生まれで、あとの村松さんも山野さんも魚瀬町の生まれです。では尾野さんと魚瀬町との繋がりは?というと、明治維新までさかのぼります。

魚瀬町にルーツを持つ尾野家の祖先が、江戸幕府崩壊後、明治8年に発せられた平民苗字必称義務令によって苗字を名乗る際に魚瀬(おのぜ)の地名から【おの=尾野】という苗字を付けた。と言われているそうで、『をのぜ』との繋がりの深さと歴史を感じました。そんな今回の企画展にはうってつけの袖師窯。まだまだたくさんの作品が所狭しと並んでおります。袖師窯130年の歴史と今を店頭で感じていただきたいです。

こちらも今回が初めてのお取り扱いとなる『出雲民藝紙』と山野孝弘さんの手による籐細工。これまで何箇所かの和紙の産地を訪ねた事がありますが、出雲民藝紙が作られる松江市八雲町の工房ほど、昔ながら環境と技法を守って作られている現場は知りません。清らかな沢の流れで原料となる楮や三椏を洗い、戸板のような大きな板に漉いた和紙を貼り付けて畑の中で天日干しする。手漉き和紙を謳いながらも近代化が進んだ産地が多い中、ここまで原始的な環境と技法で作られているとは驚きでした。

山野さんの作る籐細工の瓶敷や土瓶の弦もたくさんのお問い合わせをいただいております。土瓶の弦は幅3寸(9㎝)・3.5寸(11㎝)・4寸(12㎝)の3サイズです。お求めの際は予めご使用になる土瓶のサイズをご確認下さい。しなやかに編み込まれた瓶敷も美しく見事です。こちらは5寸と6寸の2サイズですが、6寸の方は残り僅かとなっておりますので気になる方はお早めに。そして山野さんは12日(土)に在廊して下さいます。

ゴールデンウイークを挟み2週にわたってお届けした『をのぜの人~ガラスと陶器と和紙の人』ももうすぐ終了です。これまでたくさんの品物が旅立って行きましたが、これで少しはスッキリ見やすくなった感じです。そうなると今まで気が付かなかった品物が目に付くようになり新しい発見が生まれます。まだまだたくさんの品物がございますし後半の方がゆったりご覧いただけますので狙い目です。お悩み中の方もこれからの方もまだ間に合いますますので皆様のご来店を心よりお待ちしております。

【後編】4月28日(土)より『をのぜの人~ガラスと陶器と和紙の人』開催します。

【4月~ゴールデンウイーク明けまでの営業について】
4月は 20日(金)・ 27日(金) をお休みとさせていただきます。5月のお休みについてはまだ未定ですが、イベントの会期中である 5月13日(日)までは休まず営業致します。よろしくお願い致します。

企画展『をのぜの人~ガラスと陶器と和紙の人』のご紹介、後編です。三人の作り手の内、前編では『カンナカガラス工房 村松学』さんをご紹介いたしました。後編では島根県松江市に明治時代から続く『袖師焼窯元』の5代目、尾野友彦さん。柳宗悦に見出され人間国宝『阿部榮四郎』が確立した出雲民藝紙の職人でありながら土瓶敷きや弦などの伝統的な籐細工も手掛ける山野 孝弘さん。このお二人をご紹介していきます。

MARKUSと袖師窯さんとのお付き合いは2016年からですからもう2年ほどになります。初めて工房にお邪魔したのが2016年の秋の島根仕入旅で、東京を出発して出雲空港に降り立った後、一番最初に向かったのが袖師窯さんでした。松江の市街地からも程近い、宍道湖畔を走る道路から脇道に逸れてすぐの木立の中にひっそりと佇む、築100年以上はたっているであろう堂々とした建物が袖師窯の工房です。

実は今回の企画展は袖師窯さんのアイデアで、昨年の島根仕入旅の際に袖師窯さんに再訪した際に、翌年の5周年企画について何かできないかご相談したところ、2016年の秋に米子にある書店で開催した第1回の『をのぜの人』を、今度は東京でやってみないか。と、ご提案いただきました。その時のメンバーも袖師窯の尾野さんをはじめカンナカガラス工房の村松さんと出雲民藝紙の山野さんに3人で、東京ではなかなかお目にかかれない個性的な組み合わせにとても興味を持った私はすぐに乗り気になりました。

普段でしたら割と物事を慎重に考えるタイプなので、一旦東京に帰ってからお返事をするところなのですが、この時はこの魅力的な企画にすぐに食いついて、その場で簡単な打ち合わせに入りました。ひとまず他のお二人への最初のお声掛けは尾野さんの方からして下さる事になり、私は東京に帰ってから頃合いを見計らってお二人にご連絡をして、翌年のゴールデンウイークの企画展にご参加いただける承諾をいただきました。

村松さんも山野さんもお名前や作品などは目にしていたのですが、それまで面識が無かったため、今年の1月の東京に大雪が降った日に山野さんが活動する出雲民藝紙工房と村松さんの工房がある広島にご挨拶に行ってきました。この時も袖師窯さんにお邪魔してDMや会期までの段取りなどの打ち合わせをしたのですが、今回のDMはデザインの経験がある袖師窯の尾野さんの奥様に製作していただきました。

明治10年の開窯から130年余の歴史を持つ袖師窯は、三代目の尾野敏郎氏が柳宗悦や河井寛次郎、バーナード・リーチの指導を受け、民藝陶器の窯として知られるようになりました。現在は5代目の尾野友彦さんが窯を引き継ぎ、地元の陶土・原料を使用して、出雲に伝承された陶法を基礎にしながらも、友彦さんは一時期は益子の人間国宝『島岡達三氏』に師事するなど各地の陶法を会得し、簡素な中にも潤いのある現代の暮らしに役立つ日用品としての陶器造りを探求しています。

袖師窯の特徴は、器を使う人とその食卓を考えて作られた器という事ではないでしょうか。何か特定の技法や釉薬に特化して作り続けるというよりは、移り行く時代や生活様式に合わせて使う人の要望に合わせて、多種多様に自在に変化していく柔軟さと懐の深さが最大の魅力だと思います。

地釉・柿釉・ゴス釉・藁白釉・糖白釉・辰砂等、様々な釉薬を巧みに使い分け、掛分・スリップウェア・鉄絵・刷毛目・釘彫・櫛目など、長い歴史の中で培われた多彩な手法を用いて生み出される暮らしのうつわは、日々の暮らしに穏やかに馴染み、世代を超えて愛されています。

作風や技法・釉薬は幅広く多岐にわたっておりますが、作品を見ると『コレは袖師窯のうつわだな。』と、分かるモノも多く、もしかしたら知らずに使っていて『このうつわも袖師窯だったのか。』と気付く方も多いかもしれません。そのくらい何気ない日常に溶け込んでいるうつわです。ぜひ店頭でその魅力を再発見して下さい。
● 袖師窯 尾野友彦さんの在廊日は、初日の4月28日(土)です。

『をのぜの人~ガラスと陶器と和紙の人』 最後の一人、和紙の人は出雲民藝紙の職人、山野孝弘さんです。山野さんは1983年松江市魚瀬町の生まれ。大学在学中に文化財の修復について学び、文化財修復の現場の中で、廃れ行く伝統的な材料やそれを生み出す技術に危機感を覚えました。和紙もその一つで文化財を保存・修復する過程で必要になる素材として重要な位置を占めながらも、それを後世まで引き継ぐ作り手がいない。という危機的状況を実感し職人の世界に飛び込みました。

出雲地方は正倉院文書にも記述が残っているように、古くから紙の産出国でしたが画期的な発達をとげたのは江戸時代になってからと言われています。最盛期では30戸ほどで紙漉きをしていましたが、1998年の時点でわずか3戸になってしまいました。出雲民芸紙と呼ぶようになったのは1930頃からで、当時「民芸運動」の創始者であった柳宗悦氏に後に人間国宝となる安部榮四郎が出会い、柳宗悦氏の指導を受け、和紙作りに励んだ事によります。

出雲民芸紙の特徴を一言でいえば、原料の持ち味を生かすという事です。『楮紙は楮紙らしく、雁皮紙は雁皮紙らしく、三椏紙は三椏紙らしく』といういわば和紙の美学に基づいて作られています。古来の原料を用い、昔からこの地に伝わる道具や技術を駆使して葉書や便箋・封筒・貼り箱など様々な形で生み出されています。特に雁皮紙は光沢があり防虫効果も優れているので保存文書に適しています。柔らかな風合いでありながら丈夫で長持ちするのも特徴のひとつです。

出雲民藝紙の職人を目指した山野さんは『とにかく危機に瀕している出雲民藝紙を残す為に』という一心で修業を始めたそうですが、この思いは出雲民藝紙だけでなくあらゆる方向に向いています。その一つがもう一つの顔である籐細工です。松江藩に江戸末期から伝わる籐細工。こちらも無くなりつつある伝統工芸です。一子相伝で伝えられてきた籐細工ですが、5代目の長崎誠さんに教えを請いながら技術を継承しています。

もしかしたら山野さんの『もうひとつの顔』の方をご存知の方も多いかもしれません。『土瓶の弦の人』と言えば、お世話になっている我々の同業者や陶芸家もいらっしゃるはず。実はこの土瓶の弦も危機的状況にあった重要なパーツ。何でも良ければ適当なモノはあるのでしょうけど、民藝の土瓶に合う力強く細部までこだわった美しい弦はなかなかありません。それを作り出せる職人となると、もはや山野さんは貴重な存在です。

前編・後編と2回にわたってご紹介しました『をのぜの人~ガラスと陶器と和紙の人』の3人の作り手たち。既にガラスの村松さんと袖師窯の尾野さんから出品リストを頂いておりまして、3人合わせるとおよそ1200点を超える、過去最大の物量の展示会となります。幅広く多岐にわたる品揃えで、会期中に何度お越しになっても新しい発見がある展示会となる事と思います。ご期待下さい。皆様のお越しを心からお待ちしております。

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