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日々のモノ・コト

2017年 10月

雨降りの10月。入荷のお知らせ

何となく、ずっと雨降りだったな。と言う印象の10月も早いもので残すところあと1週間。グッと気温も低くなり雨の日の寒さは例年10月いっぱいまで短パンで過ごす店主を震え上がらせるには充分な冷え込みとなってきております。そろそろストーブの準備をしなきゃな。とぼんやり考えている今日この頃ですが、ここ1週間ほどで色々と入荷してきておりますので、まとめてご紹介させていただきます。

という事で、まずは久しぶりの入荷となる兵庫県の篠山で活動されている『野澤裕樹』さんより、挽き物の品々が届いております。今回は拭き漆の品物が中心ですが、以前に入荷した際に大変好評だったオークのリムプレートも入荷しております。一見洋皿のようなシャープな印象がありますが、手に取るとモッチリとした質感で、全体の緩やかな曲線も手に馴染みやすいよう細部までこだわり抜いたカタチをしています。

今回の入荷で特に目新しいのが拭き漆のぐい呑みです。先日Instagramの方にアップしたら、それを見てご来店下さった客様から『汁椀かと思った』とご指摘を受けましたので、他のぐい呑みも一緒に撮ってサイズ感がわかるようにしました。ガラスや陶磁器のぐい呑みと比べて軽くて割れにくい為、少々酔っぱらって手元が危うくなっても安心して飲み続けられます。形も大きさも様々なのでお気に入りの一つを見つけて下さい。

その他には白漆を中心に施した5寸の銘々皿。縁に彫り付けた凹凸の手触りも楽しいケヤキの4寸鉢とタモ材の6寸鉢。渋い印象になりがちの拭き漆のうつわをそれぞれ異なる技法で軽やかに仕上げています。5寸の銘々皿は菓子皿や果物をいただくのにちょうどいいサイズ感で、年末年始の来客用に備えていくつか揃えておきたくなる品物です。今回は演出としてちっちゃなリンゴで飾ってみました。

次は、先月にお邪魔してきたばかりの島根県の『白磁工房 石飛 勲』さんより湯吞みやマグ、ぐい呑みから醤油差しまで細々とした品物が届いております。この他にも鉢モノや片口、土瓶などもお願いしておりますが、その辺も年内にはいくらか入荷してくると思います。湯吞みとマグは再入荷ですが、石飛さんにも新たにぐい呑みをたくさんお願いしました。そしてこちらでも形はバラバラで、色も白磁・呉須・辰砂の3色です。

そして今回は初めて醤油差しをお願いしてみました。以前にご紹介した島根仕入旅の旅行記でも書きましたが、ほぼ衝動的な注文で、下皿を付けるかどうかをお客様に委ねるカタチで本体とは別売りで豆皿を注文してきたのですが、今回は本体のみの入荷です。下皿になる豆皿は次回の入荷となると思います。カタチはポッテリしていて、ちょっと高級な中華料理店のテーブルに並んでいそうな印象です。

今年の春に入荷して早々に無くなってしまった松本箒も少量づつですが再入荷しています。9月に発売された『& Premium』という雑誌の中でご紹介いただいた際に何件かお問い合わせをいただいておりましたので、無理言って少し分けて頂きました。年末の大掃除に向けて松本箒でスッキリしたい方は、今回が年内最後の入荷なのでお早めにどうぞ。また、今回入荷の荒神箒はお求めやすい柄無しのタイプが届いております。

今年の7月に三人展に参加していただいた鈴木史子さんからは今シーズン最初の耐熱モノが届きました。今回の入荷は直火やオーブンでお使いいただける入れ子鉢と両手鍋がそれぞれ2色です。毎年人気の平土鍋も注文しておりますので、他の作り手の耐熱モノも合わせてこれから寒くなるにつれて続々入荷してきます。ちなみ先日あまりに寒くて、昨シーズンに入荷していた鈴木さんの土鍋が早くも旅立って行きました。

こちらも9月の島根仕入旅での大きな収穫。『大社の祝凧』が入荷しました。大社の祝凧のいわれについては島根仕入旅その2で簡単にご説明しておりますので、ここでは割愛させていただきます。大社の祝凧はお正月に関係無く年中飾っておける縁起物なのですが、せっかくなので年末に間に合うように頑張っていただきました。鶴と亀の2枚1対で、赤い鶴の方を向かって左に飾るのが決まりです。

最後に、今年もやってきました『手仕事カレンダー』。今年も型染職人の小田中耕一さんによる暖かみのある楽しい絵柄がぎっしり詰まっております。ここ何年も毎年楽しみにしてご購入いただいているお客様も多く、MARKUSでもこのカレンダーが入荷すると年末が近づいてきた実感が湧いてきます。12月になればしめ飾りも入荷する予定なので、今年のMARKUSの年末は賑やかになりそうです。

という事で今年も残すところあと2ヶ月。寒くなってくると元気になるMARKUSなので、これから年末に向けて耐熱モノやスリップウェアなどが続々入荷する予定です。ご期待ください。

 

 

秋になり、ぼちぼち色々入荷し始めました。

夏の間は割と入荷はおとなしめなMARKUSですが、涼しくなってくるにつれて入荷もだんだん活発になってきます。という事で秋深まる今日この頃、売り場の様子もだいぶ変わってきましたので、9月までさかのぼって直近までの入荷商品を一挙にご紹介いたします。9月と言っても後半からの分で、最近の入荷なのでどの品物もまだまだ在庫はございます。ご安心を。

まず最初は、益子の岡本芳久さん。いつもは割と年末に近い時期にお届けいただけるのですが、今回はかなり早い入荷で、三種三色の鉢と三色のマグカップが入荷しました。

今年はいつもより多めの注文をしておりまして、今回は第1便の入荷となります。恐らく第2便はいつも通り年末近くなってからの入荷となると思います。第1便の今回はこれまで人気のあった丸鉢・ドラ鉢・花形鉢の3種という鉢尽くしです。どれも見栄えよく使い勝手のいいカタチなので、岡本さんとの初めてのお取り引きからずっと注文させていただいております。第2便の方はほとんどが今回初めてのお取り扱いとなる新作で、品物が届くのが今からとても楽しみです。

そして飛騨の安土草多さんからも届いております。島根の仕入旅に出掛ける直前に届いたのでギリギリまだ最近の入荷です。(笑)前回初めて取り扱ってみた酒器が人気だったので今回もぐい呑みや片口などを多めにお願いしました。私自身この1~2年ほどで日本酒の美味しさがわかるようになったのですが、酒器もまた日本酒を美味しく楽しむための重要な要素の一つだと気が付きました。安土さんのガラス酒器は見た目より軽く、変わった形をしているモノもありますが手に取りやすく何よりお酒が進みます。

そして定番的なグラス類も届いております。安土さんの作品はかなり幅が広く、ちょっとした形やデザインの違いやサイズ展開が多岐にわたっていますので、毎回注文ごとに少しづつ内容を変えながらMARKUSの定番を模索していきたいと思っております。今回の入荷分、酒器も含む8種はまだ第1便で、残りの分は今月末頃には入荷すると思います。その中にもショットグラスやロックグラスといったお酒が進むガラスがが入っているはずなので、そちらもご期待ください。

安土さんの少し前ですが大分県 別府の大谷健一さんから竹細工のザルが届いております。以前から洗った食器を入れておいたり野菜や果物を盛っておくのに使いたい。という事でお求めになる方が多いのですが、最近はご自宅でパンやお菓子を焼かれる方が粗熱を取るのに使ったり、もちろん買ってきたパンを置いておく器としても使えるので、用途が多様化してきています。ガラスと同様に夏の涼し気なイメージがありますが、鍋の時だったり干し野菜をするのに使ったり意外と冬の方が出番が多いような気がします。

そして寒くなるにつれて人気が高まってくる漆器ですが、先週になって益子の蜂谷隆之さんから入荷があり、MARKUSが毎年冬の定番として扱っている漆器の汁椀が全て揃いました。2列目右の筋目の入った拭き漆の汁椀だけ、入荷直後に一気に無くなってしまいまして今は在庫ゼロです。すぐに追加をお願いしまして、年内にはもう1度入荷してきますのでしばらくお待ち下さい。入荷のお知らせをInstagramにアップしたとたん、お問い合わせをたくさんいただきまして、相変わらずの人気の高さを実感しております。

そしてこちらは今月に入って久しぶりの入荷となった、沖縄の登川 均さんのやちむんです。今年の年明け1番の入荷が登川さんからのやちむんで、それ以来の入荷ですので9か月ぶりとなります。それでもかなり早い入荷サイクルなのでとてもありがたいです。今回は50点ほどと若干少量ですが、4~8寸皿や6~7寸の浅鉢、マグカップや湯呑、人気のタタラ皿まで薄く広くという感じで多岐にわたっています。

特に今回のタタラ皿の中に少し深めの角皿があって、これがものすごく使いやすそうです。長辺の長さが26㎝あるので煮魚でも焼き魚でも大抵のお魚はすっぽり収まりますし、4㎝とそこそこ深さもありますので、おでんやポトフ、ロールキャベツといった具がゴロっとして汁のあるものなんかも合いますし、なんだったらカレーやパスタだってこのお皿でイケる便利な1枚です。と、さんざんオススメしていますが、青と緑それぞれ2枚づつしか入荷しておりませんので早い者勝ちですよ。

最後にこのブログを書いている最中に届いた最新ネタを二つ。以前からずっとやりたいと思っていた『猫つぐら』がついにMARKUSにやってきました。猫ちぐらと呼ぶ地域もありますが、こちらは猫つぐらです。もともとは人間の赤ん坊用に稲藁で編んだ揺りかごである『つぐら』が原型で、夏は涼しく冬は暖かい天然素材の猫のおうちです。

長野県北部と新潟県の県境に位置する栄村で作らており、米どころでもある栄村は冬は雪で閉ざされてしまうため農家の冬場の手仕事として、栄村産のコシヒカリの稲でひとつひとつ作られています。ひとつ作るのに使用する藁はコシヒカリ約20把で熟練の職人でも完成に1週間かかるそうです。残念ながら我が家には猫はいませんが、猫つぐら欲しさに猫を飼おうと真剣に考えた事があります。

お次は新潟の燕市から『銅のやかん』が入荷しました。実は最近、我が家のヤカンを独身時代から20年近く使っていた柳宗理のケトルから銅のヤカンに買い換えました。その使い心地の良さと美しさからお店でも銅のヤカンを取り扱う事にしました。

ヤカンはなかなか壊れる事がないので買い換え時が分からないモノのひとつですが、思い切って銅のヤカンに替えてみてはいかがでしょう?見てくれだけでなく、銅のヤカンは熱伝導率が圧倒的にいいのでお湯が沸くのが早く、水道水に含まれる塩素を分解除去したり除菌抗菌作用を持っていたり、人体に必要な銅分を摂取できたりと、なかなかの優れモノです。

今年も島根に行ってきました。その2

その1からの続き

島根旅2日目。21日の朝9時に県の職員の方や私以外の東京から招待されたバイヤーさん達と出雲市駅で合流して、さっそく最初の目的地である『大社の祝凧』を作っておられる高橋日出美さんの作業場兼ご自宅へ向かいました。

この日以降は県の公用車で各地を回る事になっており、自分で運転しなくていいので楽チンでした。メンバーは県の職員の方。今回の企画の仲介でお声掛け下さった、いつもお世話になっているデザイナーの方。私と同じく東京から招待されたバイヤーで、通販雑誌の工芸寄りの品物を担当されている方と工芸品をデザインプロダクトとして再編集した自社商品を開発しながら直営店も運営されている会社のバイヤー。そして私も含めた7名で、移動中の車内では早速名刺交換が始まりました。

出雲大社の大鳥居からも徒歩で5分もかからないほどの近くに髙橋さんの作業場はあります。出雲大社の背後には鶴山・亀山という山があり、それぞれの麓には千家・北島という国造家があります。両家に祝い事があると氏子が国引き伝説で知られる稲佐の浜でそれぞれ『鶴』と『亀』の文字を書いた凧を揚げて祝った。というのが『大社の祝凧』のいわれです。昔はタタミ一畳ほどもある大凧を揚げていたそうですが、今では凧揚げの風習は残っておらず、郷土玩具として小型化したモノを縁起物として後世に伝えているそうです。

髙橋さんで三代目となる大社の祝凧作りですが、元々は『じょうき』や『鯛車』を作っていた初代が明治の頃に衰退した祝凧を復元したのが始まりで、今では出雲に残る古い文字凧や絵凧などの復元も手掛けます。『じょうき・鯛車』とは江戸時代から全国で盛んになった精霊流しを、適当な川が無かった大社地方では竹ひごで作った型枠に紙を貼った鯛や屋形船にコマを付けて子供たちが曳いて歩いた夏の風物で、今でもその風習は受け継がれています。MARKUSでも縁起物として年末に向けて祝凧のお取扱いを検討したいと思います。

髙橋さんの作業場をあとにした私たち一行は、時間の都合で出雲大社に参拝するか出雲民藝館に行くか。という選択を迫られ迷わず出雲民藝館を選びました。出雲民藝館は民芸の趣旨に感銘を受けた出雲地方きっての豪農だった山本家の寄付や出雲民藝協会、県内外の協力者からの援助を受けて山本家の邸宅の一部を改修し展示館として使用しています。今回の旅行記のその1とその2のトップの画像は出雲民藝館の外観なのですが、その2の建物は母屋としてまだ山本家の方がお住まいになっておられます。

中の展示物はもちろんのこと建物自体も圧巻の迫力で、先人たちの暮らしに根差した技の数々をじっくりと時間をかけて目に焼き付けました。受付脇には売店も併設されており、伝統を引き継いだ現代の作り手たちの品物もたくさん並んでいました。MARKUSでもお付き合いのある作り手の品物も品物もたくさんあり、自分のお店で見る時とはまた違う表情に、新しい魅力を再発見しました。また、ココに来る直前にお邪魔した祝凧の古いモノも展示されており、ちょっと嬉しくなりました。

事務局の方が色々とご対応下さって話し込んでいる内に、出雲民藝館には全国から作り手が集まる事から、かなり共通の知り合いが多いことが発覚し、『この前は誰々が来た』といった噂話から民藝あるある話まで、思わぬところで身近な人たちのお話で盛り上がってしまいました。そして楽しいおしゃべりもそこそこに出雲民藝館を出発した一行は一気に西へ向かいます。途中にある海沿いの道の駅で初日に食べ損ねた出雲そばと、この辺りの海の幸を詰め込んだ海鮮丼のセットを平らげ、睡魔と闘いながら再び西へ向かいました。

出雲から昼食を挟んで約1時間で、大田市温泉津にある森山窯さんに到着しました。森山窯さんは今回の旅で絶対行きたかった場所のひとつ。昨年の島根旅ではアポ取りの段階で『ちょっと忙しくて…。』という事でお伺いできなかったのですが、今回は何とか訪問が叶いました。森山さんはまもなく80歳を迎えるご高齢で、河井寛次郎の直径の弟子として教えを受け1971年に同じく河井寛次郎に教えを受けた荒尾寛氏の椿窯内に自身の工房を構えました。全国の愛好家だけでなく陶工からも愛され尊敬される作り手の一人です。

これまでの何度かの森山さんとのやり取りの中で、現状で、森山さんにはとても新規のお取り引きをしていただけるような余裕も無く、以前も懇願するように注文によるお取引をお断りされている為、今回はその辺のお話は一切せず、ただの見学者となってお邪魔しました。陽の光が差し込む静かな工房で、一心にロクロに向き合う森山さんの姿は見ていて飽きません。森山窯のうつわは呉須釉と瑠璃釉が主力。その独特な柔らかな色あいと確かな技術から生み出されるうつわに心動かされ、自宅用にいくつか購入して帰りました。

森山窯さんの後にお隣の椿窯さんにも立ち寄り、次に向かった先は昨年もお邪魔した江津市の『石州 嶋田窯』さん。昨年お願いした傘立てがまだ未納品なので、やんわり催促したところ『おぉ、去年のまだだったか?』と、相変わらずの憎めないとぼけっぷりでお茶を濁そうとするのでキッチリ念押ししてきました。ここでは昨年は見かけなかった若い職人が働いており、息子さんも一緒に働いてましたので、今どこの作り手のところでも直面していた後継者問題は、ひとまずしばらくは大丈夫かな。と、少し安心して2日目を終えました。

2日目の夜は浜田駅前にあるホテルにチェックインし、懇親会と称して夜遅くまで飲みました。普段から単独行動の多い個人事業主の私は若干の人見知りではありますが、今日初めて会ったばかりとは思えないほどの同行メンバーとの打ち解けっぷりにテンションが上がり、全員ほぼ同世代という事もあり楽しくなって少々深酒をしてしまいました。ですが翌日はスッキリ目覚めて最終日の最初の目的地、浜田市内にある神楽面と長浜人形を制作する『日下 義明 商店』へ向かいました。

島根の伝統工芸品・長浜人形の職人だった、日下(ひのした)義明さんが独立して日下義明商店を創業し、神楽面も手がけるようになりました。長浜人形は、江戸中期から浜田市長浜町で生産されてきた土人形で、色彩のきらびやかさとともに温かみと気品あふれる表情が人気でした。明治時代にこの長浜人形や和傘制作の伝統技術が土台となって石見神楽面が誕生しました。石見神楽は島根県西部の石見地方に古くから伝わる伝統芸能で、廃れていく伝統芸能が多い中、石見神楽は今なおこの地にしっかりと根付いています。

日下さんの後は石州和紙会館にお邪魔して、石州和紙の歴史から原材料の加工や製造工程を実演を交えながら見せていただきました。とても面白い内容だったのですが、じっくり見入ってしまいすっかり写真を撮るのを忘れてしまいました。スミマセン。来年のゴールデンウイークにMARKUSで開催する企画展の3人のうちの一人が出雲民藝紙の手漉き職人さんなのですが、基本的な部分では同じなのでしっかり勉強させていただいて石州和紙会館を後にしました。

石州和紙会館の後に昼食を挟んで、次に向かったのはこの日の最初にお邪魔した日下さんと同じく浜田市内で『福美』の銘で長浜人形を制作している『渡辺 真奈美』さんの工房兼ご自宅です。私の事前調べでは福美さんは長浜人形の伝統的な技法に則りながらも、お目々パッチリの可愛らしい雑貨的な招き猫を制作されていて『ちょっとMARKUSには縁は無いかな。』と思っていたのですが、実際にお邪魔してみるとネット上での印象とは全く違い、漠然とですが『あ、この人ホンモノだ。大変失礼しました。』と思いました。

渡辺さんは横浜市生まれで多摩美術大日本画科を卒業後、キャラクターグッズの製造販売会社でデザインの仕事や舞台美術の仕事に就くも、1999年にご出産を機にご主人の実家がある浜田市に家族で移住しました。神楽面作りの教室が開かれていた公民館に出かけ、神楽面師・長浜人形師の安東三郎氏に出会います。安東氏は80歳を超え60年以上も長浜人形を作り続け、今なお現役で活動しています。担い手がいなくなる中、その安東氏から『やってみんか?』と誘われて渡辺さんは長浜人形制作の道に入りました。

昔ながらの人形作りにこだわる安東氏の教えを受けた渡辺さんも材料や技法には徹底的にこだわり、石州瓦の産地・江津市の粘土を石膏の元型に入れ、乾かして素焼き。貝殻の胡粉を塗って泥絵の具で着色する。絵の具に混ぜる膠まで自ら溶かし、1工程にかかるのは約2週間。安東氏の所有する型を使い昔の長浜人形を復元させた作品をいくつか見せて頂いて、その迫力や色彩の美しさに圧倒されました。口には出しませんでしたが、きっと伝統的な長浜人形作りを維持するために可愛い招き猫を作っているんだな。と思いました。

渡辺さんのご自宅を出発して最後の目的地が益田市の商工会議所です。ここでは地元の企業の方が作られている品物を見せていただいて意見交換する。という場でした。その後石見空港に向かう途中で地元のスーパーに立ち寄り、地元企業や他県にはあまり馴染みのないローカル食材のリサーチをして石見空港に到着しました。空港で2日間お世話になった県の職員の方やもう1日滞在するデザイナーの方に別れを告げ、出発ロビーで東京に帰るバイヤー同志、ビールで乾杯して飛行機に乗り込み2泊3日の島根旅の幕を閉じました。

上の地図にある赤い線は今回の島根旅の総移動ルートです。初日は米子空港から始まり出雲からまた宍道湖をぐるっと1周し、2日目以降は西へ西へと、最終的には島根県を東から西へ海岸沿いにほぼ横断した形になります。かなりハードな旅ではありましたが新しい発見や出会い、有難いお話などこの先につながる多くの収穫があった旅となりました。この旅での収穫をこれから少しづつ形にして皆さんにご紹介していければと思っております。

今年も島根に行ってきました。その1

最近はお手軽なインスタでのお知らせばかりになってしまい、ブログの方がおろそかになってしまいスミマセン。久し振りの投稿となる今回は読み物的なネタとして、9月の20日~22日の2泊3日で行ってきた島根県の旅を回想しながら立ち寄り先をご紹介していこうと思います。

私がいつもお世話になっている方で、島根県の伝統工芸などのブランディングやPRのお手伝いをされている方がいらっしゃいます。その方の仲介で、東京からバイヤーを呼んで島根県の工藝を視察してもらい、もっと広く知ってもらおうという企画で、島根県からのご招待という形で行ってきました。本当は9月21日と22日の2日間の日程だったのですが、この2日間は県の職員の方や私と同じく東京から招待された他のバイヤーと同行となる為、折角だから1日フリーに動ける日が欲しいと思い、自腹を切って20日から島根入りしました。

県が組んだ今回の行程は出雲から石見~浜田・益田方面へ西へ行き、石見空港から東京へ帰る。という予定だったので、松江や出雲を回りたかった私は石見~羽田間と同じANAが発着する米子空港から旅をスタートしました。朝まだ暗い時間に自宅の最寄り駅を始発で出発して羽田から米子空港に降り立ったのが8時ちょっと過ぎ、2日目に県の方々との合流に備えて初日の宿を出雲市駅前に取っていたので、この日の足となるレンタカーの都合もあってひとまず出雲市に向かいました。

米子空港から松江まで空港連絡バスで行き、松江からは特急やくもに乗り、出雲市駅に着いたのが10時過ぎ。駅から歩いて10分のレンタカー屋で車を借りて最初に向かったのが、『森山ロクロ工作所』さんです。森山さんとは昨年9月にお邪魔した時からのお付き合いで、ご挨拶や近況の報告もそこそこに次の注文として茶筒や薬味入れ、お盆など注文をしてきました。お話ししていてとても楽しい方で、昨年同様に奥様も交えて3人で世間話に盛り上がってしまい作業場や品物の写真を撮ってくるのをすっかり忘れてしまいました。

森山さんの所で盛り上がりすぎて1件目から予定時間をオーバーしてしまい、次に向かった先は山間部の雲南市 三刀屋にある『白磁工房 石飛 勲』さんのところです。石飛さんとも昨年9月からのお付き合いで、この春に入荷もあり既に次の注文もしてあります。今回は次回分の注文の中にあるMARKUS仕様リクエストの詳細打合せと更に追加の注文もしてきました。現地に行った時の悪いクセで、部屋中に広がる大量の見本品でテンションが上がってしまい、ついついたくさん追加注文してしまいます。

例えば今回は醤油差しを現地でお願いしてきたのですが、元々あった醤油差しは中央のモノなのですが、細かい筋の入った『しのぎ』だけでなく右にあるような『面取り』もできないか?とか、下皿も人によっては要る要らないがあると思うので、基本はナシにして左のような単品の花弁型の豆皿をセットしたらどう見えるか?などとやっている内に注文がどんどん膨らんで行ってしまいます。同様な事を土瓶や片口などでもやっていて、元々事前に注文していた倍近くのボリュームに膨らんでしまったところで注文ストップです。

帰り際に年季の入った電気窯を見せていただきました。実は石飛さんの後にご近所の『永見窯』さんの所にお邪魔するつもりでいたのですが、急用が入って外出されているそうなので、その次の訪問先である松江の『袖師窯』さんに行く前に1箇所差し込もうと考えました。パッと思い浮かぶ候補は3つ。『出西窯』と『湯町窯』と『舩木窯』です。出西さんは松江に向かうには少し遠回りで、話し込んだら長くなるのでナシ。舩木さんは完全に観光だし、アポ無しでフラッと立ち寄れる所じゃないのでナシ。という事で湯町窯に寄り道しました。

湯町窯さんでは特に今のところお取引の予定も無い為、いただいたお茶をすすりながらぼんやりとうつわを眺めて少し休憩をした後に松江の袖師窯さんに向かいました。袖師窯さんも同じく昨年9月からのお付き合いで、この1年の間に何度か入荷もあり、既にMARKUSでもファンの多い窯元です。次の注文もお願いしてあるのですが、石飛さん同様に展示室にある作品を見ながら色々と追加でお願いしてきました。早ければ年内にはいくつか形になってご紹介出来るモノもあると思います。

袖師窯さんは明治から続く歴史ある窯で、現当主の尾野友彦さんで5代目となります。その長い歴史の蓄積もあって本当に作品の幅が広く、過去の古い作品も可能なモノは割と気軽に引き受けて下さります。今回はその中から先代の頃のモノを1種類お願いしており、出来上がりがとても楽しみです。そして今回の袖師窯さんの訪問では大きな収穫と言うか有難いお話をいただいて帰ってまいりました。具体的な詰めはこれからですが、ひとまず関係各所の了承と大体の日程が決まりましたので、ざっくりと発表しますと。

来年5月のゴールデンウイークに、MARKUSの5周年記念企画として袖師窯さんを含めた3人の作り手による合同展を開催させていただける事になりました。他のメンバーや詳細はこれから小出しにお知らせしていきますが、まず東京ではなかなかお目にかかれない作り手であり組み合わせです。最初は今度何かイベントでご協力いただけないか。というフワッとしたご相談だったのですが話がだんだん大きくなり、尾野さんからいただいたご提案を東京に持ち帰って企画書に仕上げてお送りしたところ、つい先日OKをいただきました。

有難いお話をいただいて向かった初日最後の目的地は出雲大社の東側、平田にある創業300年の老舗『來間屋生姜糖本舗』さんです。すっかり話し込んでしまい辺りも暗くなってきた袖師窯さんを飛び出して、宍道湖の北岸をぐるっと走り來間屋さんに到着したのは閉店の15分前。こちらでは毎年冬場限定で生姜糖を仕入れさせていただいており、初めてお邪魔したのはMARKUSを開業する前に神戸に住んでいた頃で、それ以来なかなかお伺い出来ず、今回開業後初めて直接当主の方にご挨拶させていただく事ができました。

來間屋さんで『今後ともよろしくお願い致します』と、ご挨拶を済ませてこの日の予定はすべて終了です。この時点で19時過ぎ。朝、空港に向かうバスの中で妻が持たせてくれたおにぎりを食べて以来何も食べていない事に気付いて急に空腹を覚えましたが、ガソリンを満タンにしてレンタカーを返却する時間も迫っていた事もあり大急ぎで出雲市駅に向かいました。20時前にホテルにチェックインを済ませて空腹を満たすべく駅前の飲み屋街である『代官町』を徘徊しましたが、その辺のお話は割愛させていただきます。

その2へ続きます。

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