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2019年 10月

【丹波立杭の六窯展】を開催します。後編:窯元のご紹介

2019年10月14日(金)~11月4日(月・祝)で開催します【丹波立杭の六窯展】のご案内。前半は産地である丹波立杭についてご紹介致しましたが、後半では今回の展示にご協力頂いた6軒の窯元についてご紹介していきます。産地にお伺いする前にどこの窯元にお願いするか、まず60軒分の下調べをして絞り込んだ上で出向いたのですが、窯元ごとの個性がうまく分散するようにしたかったので今回のこの6軒を選ぶのは大変でした。

①【雅峰窯】

明治より続く雅峰窯の現在のご主人は4代目となる市野秀之さん。10代の頃に今回の六窯展にも品物をご提供頂いている同じく丹波焼『陶芳窯』の先代である清水忠義氏に師事し、雅峰窯を継承した現在は陶工と同時に丹波立杭陶磁器協同組合の理事長も務められています。後継者となる二人のご子息と共に日々丹波立杭焼の未来を見据え『Tanba Style』など新たな丹波焼の可能性を探る活動にも積極的に取り組んでいます。

雅峰窯さんのうつわは丹波立杭焼の伝統技法で大きな特徴である『しのぎ』にも全体的なシェイプにもエッジが効いていてどっしりとしていながらもスマートな印象です。色のバリエーションも豊富で選ぶのが楽しいうつわです。丹波の伝統を踏まえながらも新しい形を模索した中から生まれた、どちらかと言うと曇り空のようにくすんだ色合いの多い丹波立杭焼の中でも華やかさが際立ちモダンな雰囲気を持つうつわたちです。

②【豪人窯】

豪人窯さんは今回お願いした6軒の窯元の中でも少し異色の存在です。豪人窯の主人である野村豪人さんは兵庫県芦屋市の生まれで焼き物とは特に縁の無い人生を歩んでいたのが二十歳の時に自分の道を突き進むべくモノづくりへの道を選びました。佐賀県の有田で4年の修行を終えた後に兵庫へ戻り、丹波立杭焼の『末晴窯』西端正氏に師事して2002年に同業者のひしめく800年の歴史ある丹波の地で独立を果たしました。

生まれながらに丹波焼に馴れ親しんだ作り手が大半のこの産地において、よそ者の豪人さんが選んだのは伝統的な丹波の技法ではなく三島手や刷毛目でした。三島手は象嵌の一種で細かい線彫りや印花に白化粧を埋め込む技法で、刷毛目は藁を束ねた物や粗い刷毛で大胆に白化粧を刷く、どちらも朝鮮半島から伝わった技法です。繊細で柔らかな印象になりがちな技法ですが、豪人さんの作品は荒々しく力強さを感じます。

③【丹窓窯】

丹波立杭焼の中では珍しいスリップウェアを主体とする窯元です。現在は8代目となる市野茂子さんと娘さんのお二人で切り盛りされていますが、先代がいた以前はお弟子さんも育成し世に輩出されていました。先々代の6代目の頃から民藝運動の柳宗悦やバーナード・リーチとも親交が深く、先代である茂子さんのご主人である茂良さんも茂子さんご自身もイギリスのリーチ工房でバーナード・リーチより直接指導を受けたそうです。

丹窓窯さんのスリップウェアは、多くの人が抱いているスリップウェアの印象である豪快さや力強さとは少し違って、柔らかさやしなやかさといった優しい印象があり、強烈な自己主張でもないため色んなうつわとの相性もよく、食卓にスッと溶け込んでくれます。また、丹窓窯のスリップは一般的なスリップと違いロクロで作られているモノが多く、高台があるため洗いモノがしやすく収納時に積み重ねる際に安定感があるのも有難いです。

④【陶芳窯】

陶芳窯を立ち上げられた初代の清水忠義さんは、1979年に丹波焼の伝統工芸士になられた数少ない存在で、多くのお弟子さんを育て丹波焼発展の為に尽力されてきました。今では一線を退き忠義さんの息子さんである美好さんが2代目として窯を営まれています。親子揃って素朴で実直な熟練の職人タイプの方でその人柄は作品にも表れています。とても気さくでお顔立ちがそっくりで年の離れたご兄弟かと思うほどでした。

陶芳窯さんの作品は糠釉にしのぎ・面取りといった丹波の伝統的なモノからイッチンや墨流しなどといった技法まで多岐にわたっておりますが、色合いにしてもしのぎや面取りの筋の立ち方にしても全体を通して柔らかく優しい印象に感じます。その中でも特に今回はしのぎに特化して、オーソドックスな糠白にしのぎを施したモノと、赤土のうつわの中央にしのぎを施し、そこへ糠釉を掛けた、異なる表情の2つのタイプをご用意しました。

⑤【俊彦窯】

俊彦窯の清水俊彦さんは、河井寛次郎の弟子であり独立後は丹波篠山で作陶された生田和孝氏に師事されました。生田氏は丹波の土を使い糠釉や黒釉を中心に鎬や面取りの器を作っていましたが、俊彦さんも師匠から受け継いだ技法・土・釉薬を使い日用雑器を作っています。俊彦窯は初代松之丞から始まり4代目となる俊彦さんが1977年に開窯し屋号も俊彦窯と名付け、現在はご子息の剛さんとお二人で作陶されています。

生田氏の窯の弟子の中でも特に腕が良かった清水俊彦さん。私が最初に魅了されたのが土瓶でした。武骨でどっしりとして力強く、それでいて俊彦さんの美意識が見え隠れする実用的な生活の道具です。他のうつわたちもキリッとしたしのぎや面取りに、柔らかな白い糠釉やまろやかで艶やかな黒釉をまとったモッチリとして安心感のある佇まい。丹波立杭焼の伝統や魅力、俊彦さんの温かい人柄が全て詰まった器のように思えます。

⑥【丸八窯】

現在はお母様の清水久美子さんと息子さんで5代目となる義久さんの2代で営んでいる丸八窯。義久さんは大学卒業後に京都の窯業試験所で学んだ後、益子の松崎健氏に師事し2005年から丸八窯での作陶に入ります。丸八窯では丹波で古くから作られている塩壷や蝋燭徳利、古丹波で見られる灰被りや焼締なども手掛けながらも雅峰窯の市野さんが主宰する『Tanba Style』にも参加し現代的な作品作りにも取り組んでいます。

今回は丸八窯さんを知る人でしたらもはやアイコン的な存在となっている大小さまざまな菊皿を中心とした比較的ポップなセレクトで構成しつつも、伝統的な塩壷や蝋燭徳利なども選ばせていただき、新旧織り交ぜた品揃えとなっております。菊皿は今回の六窯展全体の品揃え中でおよそ4分の1程度を占める型物ですが、独特の柔らかな質感に加え菊花の上品で可愛らしいフォルムで食卓を華やかに演出してくれる事でしょう。

【丹波立杭の六窯展】を開催します。前編:丹波立杭焼について

【丹波立杭の六窯展】を10月18日(金)〜11月4日(月・祝)の会期で開催します。昨年もこの時期に開催した熊本県の小代焼3窯の展示と同じく、伝統的工芸品産業振興協会が主催するJTCW(JAPAN TRADITIONAL CRAFT WEEK)の一環で、今年は日本六古窯のひとつ兵庫県の丹波立杭焼の窯元、6軒にご協力いただき、およそ700点の大ボリュームで丹波立杭焼の魅力をご紹介します。

丹波立杭焼は瀬戸・常滑・信楽・備前・越前とともに日本六古窯の一つに数えられ、その発祥は平安時代末期から鎌倉時代のはじめといわれています。桃山時代までは『穴窯』が使用されていましたが、慶長16年(1611)ごろ朝鮮式半地上の『登り窯』が導入され、同時期に取り入れられた蹴りロクロとともに窯が開かれてからおよそ800年、一貫して日用雑器を主体に焼き続けており、伝統の技法を今日に受け継いでいます。

現在の産地は比較的狭い地域に60軒もの窯元が密集しており、代々稼業として焼き物を営んでいる家が多い為、皆さん幼い頃からの顔見知りで隣近所も同業者という環境なので、和気あいあいとした雰囲気でした。お話を聞くと、ほとんどが個人事業主で代々続く古い家が多い中、対応に出て下さった方の多くが私と同世代の方、または後継者がいる家で、世代交代が比較的うまくいっている産地。という印象があり安心しました。

他に産地に行ってみて印象深かったのは、さすが日本六古窯のひとつで800年の歴史を持ち、多くの窯元が密集している産地だけに、そこら中に登り窯がある事には驚きました。他の産地では何軒か複数の家で使う共同の登り窯がよくあるのですが、ここでは個々に登り窯や穴窯を持っていたそうです。現在は登り窯を使う機会もかなり少なくなってきていますが、それでもほとんどの窯元でガス窯・電気窯・灯油釜・薪窯など、3~4基の複数の窯を1軒で所有しているのは、他の産地ではあまり見られない事なので特に印象深かったです。

江戸時代には数々の名工が腕をふるった事で花器・茶器などで丹波の名が高められたのち、明治・大正・昭和と時代を経て、現在作られているのは主に生活雑器の中でも食器がほとんどだそうですが、何件かの窯元で出会った丹波独特の力強い土瓶や伝統の蝋燭徳利には目を引かれました。また多くの窯元で、現在はほとんど作られていない古い大甕などが無造作に屋外に置かれているのを見て時代の流れを感じました。

今回は個性の異なる6軒の窯元様にお声掛けして、伝統的なコレぞ丹波焼というモノからカラフルでおしゃれな丹波焼まで、幅広い品揃えでおよそ6~700点もの物量をご用意致します。昔ながらのぽってりとして落ち着いた雰囲気のうつわでホッと癒されたい方も、カラフルで現代的なうつわでオシャレにテーブル上を演出したい方も、きっとお気に入りが見つかる事と思います。そして、そこにあるのは800年もの歴史を持つ産地の懐の深さであり、この先も伝統をつないでいくために必要な変化とこだわりだと思います。

ま、あれこれと難しい事も書きましたが、とにかく一度手に取って見て触っていただきたいです。なかなか無い機会なので会期も長めに取っておりますので皆様のご来店をお待ちしております。
後編では今回品物をご提供くださった6件の窯元様をご紹介していきます。

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