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日々のモノ・コト

10月19日より『小代焼 三窯展』 ~ その②:瑞穂窯 編

 

その①『ちひろ窯・JTCW2018』編から続きまして、お次は『瑞穂窯』さんのご紹介。

瑞穂窯を興したのは、その①でご紹介した『ちひろ窯 前野智博』さんの師匠でもある初代当主の『福田 豊水』氏。そして現在、当主として『瑞穂窯』を継承しているのは豊水氏の息女である『福田 るい』さんです。伝統ある窯元を継承した当主としては珍しい女性の作り手です。ちなみにMARKUSもお世話になっている秋田の白岩焼和兵衛窯の渡邉 葵さんも女性の作り手で、再興されたおじいさまから数えて3代目です。

るいさんの祖父が古小代を集めていて、その影響を受け自身でも民藝店を営んでいた豊水氏が、古小代の微妙な青色を復元したいと、独学で窯を興したのが瑞穂窯の始まりだそうです。福田るいさんは1964年福岡県大牟田市生まれ。九州産業大学芸術学部で油絵を学んだ後『平面よりも立体的な造形物を』と、父、豊水氏の元で修業を始めます。その後、外の世界も見るべく益子の人間国宝『島岡 達三』氏の門を叩きます。

陶芸界隈とは意外なところで繋がっているもので、MARKUSでも長年お世話になっている益子の『岡田崇人』さんや松江の『袖師窯 尾野友彦』さんと同門という事になります。ちなみにお姉様は菓子研究家の『福田 里香』さん。コチラも意外な繋がりでした。島岡製陶所での修業を終え熊本に戻った後は再び瑞穂窯の父の元で作陶を始めて25年。お父様がお亡くなりなった後もしっかりと瑞穂窯を守り続けています。

12件ある小代焼の窯元の中から『瑞穂窯』さんに今回の企画をお願いしたかった理由は『色彩美と造形美』でした。『小代焼窯元 瑞穂窯 福田るい』の名前と作品は、もう何年も前から見知っており、普段から自宅でも何点かるいさんのうつわを使っているくらい、いつかMARKUSでお取り引きをお願いしたい作り手の一人でしたが、なかなか熊本まで出掛ける機会を作れないまま何年も経ってしまいました。

それだけに今回のお話はありがたく、喜んで取り組む事ができました。6月の熊本訪問がるいさんと初めてお話する機会となりましたが、初めましてで急なお願いをしているにもかかわらず頼もしく引き受けて下さいました。更にるいさんのサッパリとした面倒見の良さに甘えて、一緒に昼食を取った後に次の訪問先である『ふもと窯』までご案内いただき、2代目である井上尚之さんにも引き合わせて下さいました。

小代焼は鉄分の多い小岱粘土を使った素朴で力強い作風が特徴です。釉薬の調合や焼成温度の違いによって大まかに青、白、黄に分かれますが個体差が大きく独特の深みがあります。更にるいさんの場合、ワラ灰で生み出した独自の藍釉も大きな特徴で、従来の青小代は乳白色を帯びているのに対してるいさんが作り出す藍は他には無い更なる深みがあります。まさに親子2代で小代の青を追い求めた結果、独自の青に辿り着いた瑞穂窯の色彩美。という感じでしょうか。

もう一つ瑞穂窯の特徴と言えるのが “しのぎ”の技法。小代焼といえば“打ち掛け”のように釉薬のかかり方を生かした勢いのある技法が多いのですが、“しのぎ”の場合は掻き道具を使って器の表面を丹念に削り、削られた部分に溜まったり流れ落ちる釉薬の濃淡によって模様が浮び上がります。その模様の魅力を最大限に活かしているうつわの形状、独特なフォルムが秀逸で、表情豊かな色彩と“しのぎ”の模様にリズムが生まれ、和洋問わず食卓を彩ってくれる造形美となっております。

るいさんはチャリティーにも積極的に取り組んでおられ『クマモトのカケラ』というブローチやヘアゴムとマグネットからなるセットの販売を通して、日本各地の災害復興を支援しています。きっかけは2016年の熊本の震災で、まさに震災があったその時に窯焚きをされていたそうです。無残にも割れてしまったうつわのかけらをアクセサリなどの姿に変えて、収益の一部を被災地の復興支援に寄付する個人プロジェクトを行っています。

『伝統とは、灰を守ることではなく、熾(おき)を密かに保ち続けること。』つまり、窯の火を絶やさないと同時に情熱の炎も燃やし続けるという事。というお父様の教えを大切にし、しっかりと伝統的な日本の食事に合うような風格を持ったモノから、カジュアルなフレンチやイタリアンにも似合いそうなうつわが自然に混在する。そんな小代焼の伝統を踏襲しながらもフッと肩の力が抜けた『瑞穂窯 福田るい』さんのうつわにご期待下さい。

その③:ふもと窯 編に続きます。

10月19日より『小代焼 三窯展』 ~ その①:ちひろ窯・JTCW2018 編

会期の最初から最後まで殺人的な暑さにもかかわらず多くのお客様にお越し頂いた、7月の『齊藤十郎 陶展』以来のブログ更新です。スミマセン。しばらく夏の間は身も心もグッタリしておりました。猛暑と豪雨の記憶しかなかった今年の夏も、トドメの台風24号と共に去って行き(この投稿を書いている時点で25号接近とのニュースもありますが…)ようやく食欲の秋、うつわの秋がやってまいりました。

久し振りとなる今回のお知らせは『小代焼 三窯展』。小代焼とは熊本県北部を中心に現在12件の窯元によって作り出される江戸時代から続く焼き物で、今回はその12件の内の3件による合同展です。この企画の発端は経済産業省の支援を受けて設立された伝統的工芸品産業振興協会(以後、伝産協会)が毎年10月に開催している『JAPAN TRADITIONAL CRAFTS WEEK(以後、JTCW)』にお誘いいただいたのが始まりです。

今年で5回目となるJTCWですが、多くの方に工芸品をもっと身近に手に取って知っていただく為に、衣食住を扱うライフスタイルショップを通じて日本各地の伝統工芸品を紹介するイベントで、今年も10月19日(金)から31日(水)まで『JTCW 2018』として、東京都内の30のお店で日本各地の伝統工芸品の産地とコラボした展示販売が行われます。 ※ 詳しくは『JTCW2018』で検索してみて下さい。

このお話をいただいたのが5月の末頃で、参加の条件が『伝産協会に加盟している伝統工芸品の中から、今まで扱った事の無い産地とコラボする事』という事で、工芸品リストの中から、以前からお付き合いしたくて、でもなかなか産地に出向く事ができなかった熊本の『小代焼』を見つけて、大喜びで参加意思を表明し、6月には産地訪問として2016年の震災の爪痕が未だ残る熊本へ飛び立ちました。

小代焼は1632年肥後国に転封となった細川忠利が陶工たちを伴い小岱山麓に窯を開いて焼物を焼かせたのが始まりと言われ、現在も地元で採れる原料と伝統の技法を用いて素朴で力強い実用性の高い日用食器が生み出されています。今回の小代焼とのコラボを実現するにあたり思ったのが、『いただいたお話とはいえ、やるからには普段MARKUSで行っている展示会レベルの内容と物量で開催し、お忙しい中ご協力いただいた産地や期待してお越し下さったお客様に恥ずかしくない展示にする。』という事でした。

というのもMARKUSでは通常個展やイベント事は先ずはお付き合いの実績を積んでからお願いしており、作り手とのご相談も遅くとも1年以上前にはできているのですが、今回は準備に4ヶ月しかない上に初めてお取組みさせて頂く方々ばかりで、伝産協会からの話だから初めましてでもこちらのご相談に協力的に聞いて下さるかもしれないが物量の確保が困難だろう。というのが出発前からの課題でした。

できれば4~500点ほどは品物を集めたいと思うものの、小代焼窯元全12件にお声掛けするのも無理があり、1件だけでは到底及ばない。産地訪問の出張は2泊3日が限界で、窯元以外にもリサーチなどで回りたい所がいくつかある。(熊本ラーメンも食べたいし馬刺しも食べたいっ)という事で3~4件の窯元に絞って出発前にアポを取り、あとは当たって砕けるつもりで熊本に向かいました。そして晴れて『ふもと窯・瑞穂窯・ちひろ窯』の3件に今回の『小代焼 三窯展』にご協力頂ける事となりました。

それではまずは1件目、『小代本谷 ちひろ窯』さんのご紹介。ちひろ窯として作陶する前野智博さんはサラリーマン時代を経て28歳で陶芸の道へ入ります。次回のブログでご紹介する、今回の『小代焼 三窯展』にもご参加いただいている『瑞穂窯』の初代、福田豊水氏に師事し陶芸の基礎から学び、その後更なる修行を求めて沖縄へ渡り、読谷村の玉元輝政氏に師事し様々な技法を習得します。

2年の沖縄での修業の後、熊本に戻り1998年に自らレンガを組み手作りで窯を築き『小代本谷 ちひろ窯』として独立を果たしました。ちなみに前野さんの奥様は玉元氏の工房とも目と鼻の先にある読谷村の共同売店で働いていた頃に、沖縄で修業中の前野さんと知り合ってご結婚されたそうで、同時期に近所の大嶺實清氏の元で修業されていたMARKUSでもお馴染みの壹岐 幸二さんや真喜屋 修さんとも旧知の仲だそうです。

2003年に現在の場所に窯を移し小代焼窯元の会にも登録し、2006年には経済産業大臣指定伝統工芸士の認定も受けられました。そんな前野さんの作風は、他の『ふもと窯』『瑞穂窯』の二つが豪快で重厚感があり力強い印象が濃いのに対して、同じ小代焼きでも丁寧で軽やか・繊細。という印象があり、特に昔ながらの唐草を作る玉元氏の元で修業した名残も一部の作品に垣間見る事ができます。

土は窯の近くを掘れば出てくるという恵まれた環境。釉薬は近所の農家から分けてもらったワラを焼いた灰を使い、窯の薪も同様で地元の身近にある原材料によって自給自足に近い昔ながらの手法でうつわ作りに勤しみ『従来の小代焼というと重厚な印象で気軽に手が出にくいモノが多かった。だからなるべく現代の暮らしに合うものを心掛けています。日々の食卓で料理を盛った時に映えるという事を考えて』と語る前野さん。

その言葉どおり、小代焼の持つ伝統を残しつつも前野さん独自の感性と経験から生み出される『ちひろ窯』のうつわは、明るく軽やかで様々な食卓のシーンに溶け込み、料理との相性もイメージしやすい使い勝手の良いうつわです。東京でちひろ窯さんのうつわをまとまった数でご覧いただける機会もなかなかございません。ご期待下さい。

その②:瑞穂窯 編に続きます。

『齊藤十郎 陶展~JURO POTTERY EXHIBITION』会期延長のお知らせ

猛暑の中始まった【齊藤十郎 陶展】。たくさんのお客様にお越しいただきまして誠にありがとうございます。初日と二日目の十郎さんの在店中も遠方からお越しの方、懐かしい方、たくさんのお客様にお越し頂き賑やかなスタートとなりましたが、記録的な連日の猛暑でお出掛けを躊躇っている方もいらっしゃると思い、十郎さんとも相談して【会期を7月いっぱいまで延長】する事に致しました。

しばらくこのまま猛暑が続くかもしれませんが、もう少し会期が長ければタイミングを見計らってご来店いただけるゆとりも生まれるのでは。と思い、このようにさせていただきました。600点の大ボリュームで始まった今回の【齊藤十郎 陶展】。人気のスリップも新作の点打ちもまだまだ見応え充分の品揃えで、出来るだけ多くのお客様にご覧頂きたいと思っております。

実に幅広い品揃えで取り組んでいただいた今回の個展ですが、やはり多くのお客様の注目の的はスリップウェアでした。スリップだけでも300点ほどご用意いただいた今回の品揃えは、常設の時と比べても断然幅広く、普段はだいたい6寸以上の大きさのスリップしか取り扱わない、いつものMARKUSをご存知のお客様も目を輝かせて興奮気味のご様子でした。

定番のモノに加えて、楕円のうつわでも、いつものカレー皿に少し小さいサイズ、楕円の平皿でも少し小さいサイズを追加した4パターン。角のうつわもいつも角のカレー皿と平たい角皿。そして正方形の鉢。8寸のカレー皿に深い8寸皿と9寸皿を加えたりとバリエーションが多彩に広がっております。

小さいモノでは定番の7寸平皿や6寸皿に加えて4寸・5寸皿と丸・角・楕円の小鉢、丸・角・楕円の豆皿。といった感じでかなりの充実具合です。それとは対照的に大迫力の尺4寸の大皿と尺5寸の大鉢も今回の為に焼いていただきましたので、この機会に是非ご覧になっていって下さい。

スリップとは対照的にシンプルで素朴な土の質感を楽しめる焼き締めのシリーズもたくさんご用意いただきました。以前に6寸と7寸の鉢のみ入荷した事がありましたが今回は8寸と9寸の深鉢。4寸と5寸の小鉢など幅広いサイズ展開です。スリップと同じ作り手によるモノとは思えないほどのシャープな線でザラリとした質感が楽しめるうつわです。

冬場に人気だった楕円の耐熱鉢やバーナードリーチや出西窯を思わせる平皿も飴釉に指描きを施した装飾で人気を集めています。ピッチャーやポット、マグカップから湯吞み・タンブラーなど様々なアイテムが揃っており、スリップの次いで品揃えがが充実しているシリーズです。

小物もたっぷり届いておりまして、マグカップ・湯呑・飯碗・醤油差しなども合わせると100点を大きく上回ります。カタチや柄、釉薬の種類も様々でなかなか絞り切れないため皆様苦労して選ばれています。個展の会期中にもギフトのご依頼を何度かいただいておりますが、店内の込み具合によっては少々お時間をいただく事もございますので予めご了承下さい。

以前にもお話した事がありますが、十郎さんはポットやピッチャーなどパーツを組み上げて作っていくのが好きな方です。スリップウェアのような豪快な作業をしていたかと思うとポットのような細かい作業も大好きだそうで、その最たるモノが【切り子】のシリーズです。上の画像の左下のモノですがとにかく作業が細かい。『そこまでやるのか』というほど気を抜く事無く細部までこだわりが行き届いております。

そして今回、秘かに注目されているのが、十郎さんも『何年ぶりかわからない。』とおっしゃるほど久し振りに作っていただいた土瓶です。以前から良い弦があれば作りたいとおっしゃっていたので、5月の三人展で山野孝弘さんから譲っていただいた弦を十郎さんにお渡ししてこのたび実現しました。十郎さんらしいどっしりとした佇まいで、田舎の縁側で家族みんなで回し注ぎできるたっぷりとした容量。というイメージです。

イッチン・点打ち・指描きなど、様々な技法で、これまた様々な大きさのどんぶりや鉢も作っていただきました。とかく大きなうつわが好きな私としてはワクワクします。選んでいるお客様も何を盛り付けようか妄想を膨らませながら楽しそうに悩んでいて、この個展をやってよかったなぁ。と思える瞬間のひとつです。

猛暑もまだまだ続きそうですが、【齊藤十郎 陶展】も会期を延長してまだまだ続きます。夕方になると日差しも和らぎ、いくぶん涼しくなってくるので、その頃合いを狙ってのんびりご来店されてじっくりお選びになるお客様が多いです。まだまだ見どころたっぷりですので、店内を涼しくして皆様のご来店をお待ちしております。

 

 

『齊藤 十郎 陶展』開催のお知らせ

今年は例年より早く梅雨が明け、2019年も後半戦に突入しました。今年は積極的にイベントを打っていこう。というチャレンジの年で、2月には吹きガラスの安土 草多さんによるの照明の個展。ゴールデンウイークには島根県松江市の北岸にある小さな港町、魚瀬にゆかりのある袖師窯 尾野友彦さん・カンナカガラス工房 村松 学さん・出雲民藝紙 山野 孝弘さんによる3人展。『をのぜの人~ガラスと陶器と和紙の人』を開催しました。

そして第3弾となる今回は …
【 齊藤 十郎 陶展 ~ JURO POTTERY EXHIBITION 】 2018年 7月14日(土)~ 22日(日)の会期で開催致します。 ※  作家在店日:7月14日(土)・15日(日)・ 会期中は休まず営業します。
これから夏本番。というこの時期に暑苦しいまでのボリュームと品揃えでお届けいたします。ご期待下さい。

さかのぼって調べてみると十郎さんとは2014年の秋からのお付き合いで、最初の納品は2015年の年明けでした。もっと早くからお付き合いがあったと思っていたので自分でも意外でした。今回の個展のお話がまとまったのも割と急な話で、昨年の秋に十郎さんの工房にお邪魔した時でした。普段から仲良くさせて頂いている中目黒のSMLさん絡みでの飲みの席でご一緒する事が多かったのですが、人気者の十郎さんの周りはいつも賑やかで、私はあまり積極的に声を掛けられずにいました。

十郎さんの工房にお邪魔した時もその話になって、十郎さんもMARKUSさんはマメに注文もあるし、よく顔も合わせるのにあまり絡んでこないなぁ。という印象だったそうです。そこで、いざ工房で初めて二人っきりでお話してみると急にそれまでの距離を縮めるように話が弾んで、MARKUSさんは個展とかあまりやらないの?という話題から 『いやいや、十郎さんでしたら是非とも。』という事で個展が決まりました。

十郎さんと言えば、豪快なスリップウェア。という印象をお持ちの方が多いと思います。もちろん私も十郎さんのスリップは大好物で、スリップの深みに引きずり込まれるきっかけとなった作り手の一人です。これまで何人ものスリップ作家の作品を見てきましたが十郎さんの作品は見てすぐわかります。ですが今回はスリップウェアだけでなく、十郎さんの持っている様々な顔を見ていただきたいと思っております。

十郎さんは1969年、神奈川県藤沢市の生まれ。数年の会社員生活の中で薪で焼成される器の美しさに魅了され、陶芸を志し1993年より熊本県の小代焼 ふもと窯の井上 泰秋氏の元で修業を始めます。その後1998年より鳥取県の岩井窯 山本 教行氏に師事し1999年に岐阜県の高山で独立を果たします。2004年には現在の工房がある静岡県伊東市に拠点を移し登り窯を築きます。2008年にイッテコイ窯に直すものの2015年には再び自らの手で4連の登り窯を築き現在に至ります。

小代焼 ふもと窯の井上泰秋氏のもとで薪窯での焼成と轆轤成型の基礎を学び、岩井窯 山本教行氏のもとで様々な装飾技法とカタチを学んだ十郎さんの作風は、しっかりとした基礎や技術に裏打ちされた上で多岐にわたっており、そして非常に奥が深いです。今回の展示ではスリップ以外にも灰釉や焼き締め、象嵌や切り子のような彫り物、古い沖縄に影響を受けたモノなど、様々な作風に取り組んでいただいております。

工房でお話した時も、『スリップのような型モノをしばらくやっていると、今度は無性にロクロを挽きたくなる。そしてロクロばかり挽いているとまた型物をやりたくなるんだよね。』なんて事をおっしゃっていました。そして『スリップやイッチンの様な感覚的な一瞬の勝負のよう装飾をやっていたかと思うと、緻密な作業もやってみたくなる。色々やるのが好きだから、それでバランスが取れてるんだろうね。』と楽しそうに語って下さいました。

実際十郎さんはポットや醤油差しなどを作るのがお好きで、『色んなパーツを組み立てて一つにしていくのが、プラモデルみたいで好きなんだよね。』と言っており、工房の片隅にある事務机の棚の上にはプラモデルの箱が山積みとなっていました。5月の企画展の際に籐細工の山野 孝弘さんに譲っていただいた土瓶の弦を『もし気に入って下さったらコレで土瓶をお願いします。』と十郎さんにお渡ししてありますので、もしかしたら今回の個展でカタチになってお披露目できるかもしれません。

何気なくMARKUSの事を気にかけて下さり、今回の個展を期にグッと距離を縮める事ができた十郎さんですが、そのお人柄から直接のお取引き以外にも最近になって思わぬ所で大変お世話になりました。6月の末頃に出張で熊本の小代焼の窯元を何件か訪問したのですが、是非ともこちらとお付き合いしたい。という思いが以前から強かった、小代焼 ふもと窯で修業された『まゆみ窯 眞弓 亮司』さんの工房にもお邪魔しました。

眞弓さんと十郎さんは兄弟弟子としてふもと窯での修業時代を過ごしており、今でも交流があるそうです。そして十郎さんがふもと窯を卒業した後に師事した岩井窯での兄弟弟子であり、MARKUSでもずっとお世話になっている鳥取の牧谷窯 杉本 義訓さんとも十郎さんを通じて長年の交流があります。お取り引きのお願いが眞弓さんの工房を訪れた真の目的ですが、まずは眞弓さんのうつわ作りの背景にある物語や思いを知りたかったのと私の考えや人柄を知ってもらうために、長い時間をかけてたくさんのお話をしました。

そこでのやり取りは割愛しますが、最終的にはお付き合いいただける事となりまして、決め手となったのが『十郎ちゃんや杉本君とちゃんとお付き合いされているMARKUSさんだったら大丈夫 』との事でした。十郎さんや杉本さんに絶大な信頼を寄せ、その二人が信用しているんだったら安心して付き合える。という本当にありがたいお言葉をいただきました。まさに十郎さんのお人柄がなせる業で、遠く熊本から十郎さんに心から感謝したエピソードです。

引き寄せられるように導かれて決まった今回の齊藤十郎 陶展。様々な縁に感謝しつつ皆様のご来店をお待ちしております。スリップウェアのファンの方もこれから十郎さんの仕事の幅広さを知ってみたい方も、きっとご満足いただける内容になるかと思います。是非ともご期待下さい。

 

『をのぜの人~ガラスと陶器と和紙の人』5月13日まで。

4月28日(土)から開催しております『をのぜの人~ガラスと陶器と和紙の人』もゴールデンウイークも終わり、後半戦に入りました。連休中はたくさんのお客様にお越し頂きまして誠にありがとうございます。展示総数1350点と、過去最大の物量を投入した今回の企画展も残すところあと数日となりました。

● 5月20日(日)はお休みをいただきます。

会期前日の27日は徹夜作業での売り場準備となり、明け方にいったん自宅に帰ってシャワーを浴びて着替えて店へとんぼ返りという、久し振りの重労働と寝不足で妙なテンションのまま初日を迎えましたが、おかげ様で満足いく売場も完成し、無事に開店からたくさんのお客様をお迎えする事ができました。

初日の28日はカンナカガラス工房の村松学さんと袖師窯の尾野友彦さん。29日にも尾野さんに在廊していただき、お二人に会いに関東近郊だけでなく遠方からもたくさんの方にご来店いただきました。以前に村松さんの個展で作品をご購入された方や、袖師窯さんにお邪魔した事のある方、関東にお住まいの尾野さんのご親戚の方など、両日とも和やかな空気ながらも終日賑わっており、気持ちのいいスタートとなりました。

とにかく今回は1350点という大ボリュームを、どうやって余すところなく全てお見せするか。というのが売り場づくりの課題となったのですが、どうにか全商品を出し切りました。ストックしようにも売場から下げている常設商品があったため、とにかく出し切るしかなかったというのが正直な所なのですが、満遍なく手に取っていただきやすい売り場になったようで、お客様からもご好評いただきホッとしました。

今回のカンナカガラス工房・村松 学さんの品揃えは、ワイングラスやタンブラーなどのグラス類とお皿や鉢などのうつわ類がそれぞれ4割ずつ。ピッチャーやフタ物、花器や1点モノなどで2割くらいといった幅広いラインナップでおよそ480点。グラス類でもクリアのモノから色ガラス、細い色ガラスを巻いたモノやグラヴィール彫刻という技法を施された手の込んだモノなど、これまで扱った事の無いタイプの作品もたくさん並びました。

今回の展示会が初めてのお付き合いとなった村松さんですが、前回のブログでご紹介したようなキャリアに裏付けられた確かな技術と幅広い作品群にただただ圧倒されるばかりでした。村松さんが在廊して下さった初日には、お客様に混じって『ココはどうやっているのか?この部分はどうなっているのか?』などと色々と質問を投げかけ、それに対しても丁寧にお答えいただき、こういった所でも村松さんの誠実な人柄が窺えました。

そして何より目を奪われたのが、花器やピッチャーなど1点モノなどに見られる緻密な細工と造形美、そして鮮やかな色彩です。まさに師匠である舩木先生ゆずり。という事でしょうか。大小さまざまな花器やフタ物、色鮮やかなうつわ類からグラス類までまだまだたくさんの作品がございますので、この機会をお見逃しなく。

袖師窯さんとはまだ2年ほどのお付き合いですが、今回は袖師窯130年の歴史や作品の奥行、懐の深さをまざまざと感じ、思い知る展示会となりました。まず今回袖師窯さんが今回の展示会の為にご用意下さったうつわはおよそ650点。これだけでも個展レベルの物量です。そしてその品揃えも新旧織り交ぜた非常に幅広いラインナップで、私自身も初めて目にする作品たちがたくさん並びました。

近年は二彩やスリップなどのパッと目を引く華やかなうつわが人気で今回もたくさん並びましたが、呉須や並釉、石見地方に古くから伝わる柿色の来待など、袖師窯の歴史を見るような昔から作られている作品も多数ご用意いただきました。ご来店いただいたお客様の中には古くからの袖師窯のファンの方もいらっしゃって、『コレは先々代のおじいさんの頃に作り始めた柄だね。』などと当時を懐かしむようにお話して下さいました。

『魚瀬=をのぜ』と袖師窯の関わりについてもとても興味深いモノでした。今回の『をのぜの人』は島根県松江市魚瀬町にルーツを持つ3人の作り手の合同展ですが、DMを見てお気付きの方もいらっしゃったかもしれませんが、袖師窯の尾野さんだけ松江市の市街地の生まれで、あとの村松さんも山野さんも魚瀬町の生まれです。では尾野さんと魚瀬町との繋がりは?というと、明治維新までさかのぼります。

魚瀬町にルーツを持つ尾野家の祖先が、江戸幕府崩壊後、明治8年に発せられた平民苗字必称義務令によって苗字を名乗る際に魚瀬(おのぜ)の地名から【おの=尾野】という苗字を付けた。と言われているそうで、『をのぜ』との繋がりの深さと歴史を感じました。そんな今回の企画展にはうってつけの袖師窯。まだまだたくさんの作品が所狭しと並んでおります。袖師窯130年の歴史と今を店頭で感じていただきたいです。

こちらも今回が初めてのお取り扱いとなる『出雲民藝紙』と山野孝弘さんの手による籐細工。これまで何箇所かの和紙の産地を訪ねた事がありますが、出雲民藝紙が作られる松江市八雲町の工房ほど、昔ながら環境と技法を守って作られている現場は知りません。清らかな沢の流れで原料となる楮や三椏を洗い、戸板のような大きな板に漉いた和紙を貼り付けて畑の中で天日干しする。手漉き和紙を謳いながらも近代化が進んだ産地が多い中、ここまで原始的な環境と技法で作られているとは驚きでした。

山野さんの作る籐細工の瓶敷や土瓶の弦もたくさんのお問い合わせをいただいております。土瓶の弦は幅3寸(9㎝)・3.5寸(11㎝)・4寸(12㎝)の3サイズです。お求めの際は予めご使用になる土瓶のサイズをご確認下さい。しなやかに編み込まれた瓶敷も美しく見事です。こちらは5寸と6寸の2サイズですが、6寸の方は残り僅かとなっておりますので気になる方はお早めに。そして山野さんは12日(土)に在廊して下さいます。

ゴールデンウイークを挟み2週にわたってお届けした『をのぜの人~ガラスと陶器と和紙の人』ももうすぐ終了です。これまでたくさんの品物が旅立って行きましたが、これで少しはスッキリ見やすくなった感じです。そうなると今まで気が付かなかった品物が目に付くようになり新しい発見が生まれます。まだまだたくさんの品物がございますし後半の方がゆったりご覧いただけますので狙い目です。お悩み中の方もこれからの方もまだ間に合いますますので皆様のご来店を心よりお待ちしております。

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